第4章

 アクエリアス大氷球で、ヤマトの再改装が急がれていた。
「真田さん、デスラーが送ってきた技術の装備にどのくらい掛かりますか?」
 古代は、真田に聞いた。
「あっ、艦長!! 今、坂東たちにデスラー総統が送ってきた設計図を元にヤマトに合った改造をさせている最中だ」
「敵のパイペロン爆弾が落ちるまでに完了できますか?」
「新たな装備を加えるとまた、機関出力など調整しなおさんといかん!!」
 調整が必要と言う真田。

「艦長は、誰だ!?」
 空間騎兵隊の服を着た男が聞いた。
「私が、宇宙戦艦ヤマトの艦長、古代進だ!!」
 古代が名乗り出る。
「そういうお前は、誰だ!? 乗艦名簿にも載っていない顔だ」
「俺は、長官命令でヤマトに乗り組むことになった空間騎兵隊の綾崎貞治だ!!俺以外に、副隊長の愛沢七希以下30人に乗艦許可をくれ!!」
 そう言って、綾崎は命令書を見せる。
「確かに長官のサインだ。 綾崎、ヤマトへ乗艦を許可する」
「彗星帝国戦の時みたいに問題を起こさなければいいのだが……」
 真田は、過去のことを思い出した。

         ◇

「之が、バラン星? 俺は、こんな星を警備させられるのか!?」
 気乗りしないホルギリス。
「司令、そう仰られずに周囲の空間を確保する命令を……」
 副官が命令を促す。
「第10~第20戦隊は、周囲の空間を確保しろ!!」
 ホルギリスは、退屈そうに命じた。
命令を受けた戦隊が、艦隊から別れ其々の担当宙域へ散っていった。
「司令、ブリュンスタ大提督の命令を受けた時の元気は何処へ言ったのですか?」
「今まで、戦った奴らは手ごたえがない。 戦う気も起こらん!!」
 戦う気がしないと言うホルギリス。
一方で、バラン要塞基地化作業は順調に進んでいた。

         ◇

「今頃、退屈に殺されているだろうな……」
「あ奴は、我が帝国の前戦部隊でも指折りの戦闘狂」
「奴は、戦闘狂故、退屈に殺されるだろう」
 ブリュンスタとアムールステルは、酒を飲みながら語る。
「大提督は、其れを待っておられるのですか?」
「何れ、奴には存分に働いてもらうことになる。 地球もあのまま黙っていまい」
「其れに他の銀河系の連中も……」
「移民のため此の宇宙まで来たかいがあったかもしれん」
「如何いう事ですか?」
「我らが宇宙の周辺に骨のある奴らが居ないと言うことだ!! 如何やら、此の宇宙の連中は、多少骨があるようだからな」
 如何、料理しようか考えるブリュンスタ。

         ◇

「皇帝陛下、移民宇宙船[ビッグ・プラント]へ帝国の臣民の移乗開始しました」
 帝国支配庁長官、ストラウスが報告する。
「ストラウス、後どのくらい掛かるか!?」
「全ての臣民が乗り込みを完了するまで1200ガルバート時間ほど掛かります」
「そうか、全ての輸送艇を導入して移乗を急がせよ!!」
「はっ!!」
「我が宇宙は、後どのくらい持つか!?」
「長くて1000年、短くて後数年というところかと……」
「思ったほど、残されておらんようじゃの」
「はい。 移動速度が遅い移民船だと星系外に無事出れるかギリギリです」
 ガルバート帝国がある星系は、物凄く巨大な太陽系なのである。其のため船足の遅い移民船が星系の外に出るのに途轍もない時間が掛かるのだ。
「移民船は、多くの臣民を乗せる為、殆どを居住区画が占めています」
「其れは、知っておる」
「移民船の速度を上げるため軍艦を推進機関として利用するためには装甲を強化する必要があります緊急時にワープすることになった場合、スピードに絶えられずに宇宙船がバラバラになってしまいます」
「ならば、門を使えば良いであろう」
「確かに、ソードを使えばバラバラになる心配はありませんが平面宇宙で大量のエネルギーを消費してしまいます。途中で幾度も補給をせねばなりません」
「どちらにせよ、莫大な予算をつぎ込んだ事業だ!! 必ず成功させねばならぬ。
私の両肩には全ての臣民の期待が圧し掛かっておるのだからな」
 彼の肩には、重圧が圧し掛かっていた。 しかし彼は、其れを感じさせない器量があった。
「必要とあらば、資金を更につぎ込んでも構わん!!」
「かしこまりました」
 ストラウスは、皇帝の執務室を出て作業に入った。
「我らが先祖達よ!! 此度の移民計画を成功させたまえ」
 ラムラージュは、空を見ながら祈った。そして、彼は信じられないものが見えた。
「我が帝国の艦隊がたった一隻の戦艦に敗れるのか!?」
 彼は、未来が見えるのだ。其の未来視で帝国を此処まで強大な国にしたのだ。
「グリジアーノ!!」
「お呼びでしょうか!? 陛下」
「帝国本星及び各根拠地に留めてある分艦隊を編成し銀河系方面へ進軍させよ!!」
「それでは、本星の防衛は如何されるのですか?」
 グリジアーノが皇帝に聞いた。
「其れならば、アテダンダース大提督に執らせるがよい」
「彼ならば、本星を防衛し敵戦艦を撃沈してくれるでしょう」
「ならば、直ぐに呼び戻すがよい!!」
「では、直ぐに呼び戻す命令を連絡艦隊に命じましょう」
 グリジアーノは、命令を出すため皇帝執務室を出ていった。
「此の帝国を私の代で途絶やすわけにはいかんからな……」
 彼は、民族存亡という重責を背負っている。
「噂で聞いたが銀河の大国、ガルマン・ガミラスのデスラー総統は同一民族の星を見つけたという。ならば、我が同一民族も何処かに居るのかもしれん」

         ◇

 ガルバート帝国が発射したハイペロン爆弾が地球へ落ちるまで後25日。

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