第12章

「各機関、チェック完了!!」
 ヤマトでは、最後のチェックが行われていた。
「各砲塔、旋回良好!!」
 乗組員、総出で行われたチェックは滞りなく終わった。
「ヤマト戦士諸君に告ぐ!! 全乗員に1日の休息を与える。 出撃まで各自、身体を休め英気を養ってほしい。 艦長より以上!!」 
 古代は、艦内放送で言う。
「宮川!! メインクルーと電算室のメンバーを中央作戦室に集めてくれ!!」
「メインクルー及び電算室のメンバーを中央作戦質に集めます」
 そう言って、宮川は主要メンバーを召集する為、放送を流した。

         ◇

 中央作戦室では、二人の人物が作業をしていた。
「戦術の検討は、進んでいるか?」
 古代に声をかけられる二人。
二人は、声の主に敬礼した。
「ガルマン帝国から提供された情報を元にシミュレーションしてみました」
「説明は、待ってくれ!! 主要メンバーが集まってからだ!!」 
 数分後、主要メンバーが集まった。

「皆に紹介しておこう。 中央作戦室の責任者の……」
「土方隆司です」
「山南宗司です」
 自己紹介する二人。
「既に苗字で気づいたかもしれないだろう。 土方隆司は、土方提督の息子だ。 そして山南は、ヤマト艦長を務めた山南艦長の息子だ」
「ヤマトに乗り組み戦術プランを立案しシミュレーションを繰り返し、其れを実戦で生かすのが仕事です」
 自らの仕事を言う土方。
「同じ苗字だから、まさかと思ったが彼の土方提督の息子だったか!!」
 空間騎兵隊の土方が言った。
「はい。 つい先日、士官学校を出てヤマトへ配属されました」
「と言うことは、山南もか……」
「土方は、主席で、自分は、次席で卒業しました」 
「No1とNo2か…… 防衛軍もよく配属したな」
 普段、主席と次席の二名を同じ場所に配属することはない。
今回のように同じ場所に配属されるのは、異例中の異例である。
「はじめてくれ」
 古代は、二人に話を始めるよう言った。
「ガルマン・ガミラスからの情報でバラン星に基地があることは分かっています。 その基地は、軌道上に存在しています」
 土方が言い、山南がパネルに映像投影した。
「映像で分かると思いますが、基地の一部は巨大な戦艦で出来ています」
「其の戦闘力は、ガルマン帝国の機動要塞の戦闘能力を一瞬で半分以下にするほどです」
 之もガルマン帝国から提供された情報だ。
「敵の戦力を削るには、敵の射程外から攻撃するのがベストです。 敵も航空戦力を持っていると推測します」
「其れで、どれくらい持っていると読む?」
「敵艦の内部は分かりませんが、巨大戦艦の数から考えると2000機以上保有していると思われます」
「加藤!! 此の数を相手に出来るか?」
「はっきり言って、厳しいですね。 離脱する機も何機か出るでしょう」
「そうか…… 最初から厳しい戦いになるな」
「おそらく、監視衛星を出して我々が来るのを待っているでしょう。 先制攻撃の準備万端で」
「波動砲を使えばあっという間にけりがつきますが、バラン星に影響与えてしまいます。 更に敵は、波動砲封じの陣形を敷くはずです」
「圧倒的不利な条件の上、戦力を上回る相手を倒す方法も検討しているのだろ!?」 
 古代は、土方に聞いた。
「はい。 考えてあります」
「言ってみろ!!」
「如何考えても正面から戦えば、我々の負けです。 しかし、敵の背後から攻めれば戦力差を埋めることが出来ます」
 敵は巨大な戦艦という点に着目した作戦だった。
「よし。 土方、山南!! 決戦までに其のプランをまとめておいてくれ!! 後、10日ほど時間がある」
「はいっ!!」
「島!! 大マゼラン星雲までの航路は出来たか!?」
「出来ています。 敵との戦闘の作戦によっては、バラン星より先の航路を見直さないといけません」
「そうか…… 航海班のメンバーと土方たちと詰めてくれ!!」
「了解!!」
 作戦会議は、休憩を取りながら丸一日続いた。

 ヤマトの出撃は、翌日だ!!

第11章

『此方、機関室!! エンジンの改装作業終了』
 機関室から作業完了の報告が来た。
「よし。 徳川!! 最終チェックを兼ねて機動手順の確認をしろ!!」
『了解!!』
「後は、波動砲だけか……」
 ヤマトの改装も波動砲を残すだけとなっていた。

「まだ、終わらないのか!!」
「す、すみません。 瞬間物質移送機の本体を何処に組み込むかで悩んでまして……」
「真田さんに聞けばいいだろう?」
「其れが、自分で考えてやれといわれました」
 悩む作業員。
「本当に、方法はないのか?」
「はい。 いろいろ考えましたが、ありません」
「まだ、あるだろう!? 一箇所だけ……」
「あそこに組み込めるわけありません。 どうやってあの装置を組み込めと言うのですか!? 小さくしなければ、とても組み込めるわけ……」
 はっと気づく作業員。
「如何だ!? あっただろう」
 坂東が言う。
「ありました。 形を変え小さくすればいいだけでした」
「ヤマト出撃は、4日後だ。 急げ!!」
「はっ、はいっ!!」
 其の作業員は、何かに取り付かれたように必死で作業に当たる。
今までの遅れを取り戻すかのように……

         ◇

「むかつく!! 何時になったら戦えるんだ!!」
 ホルギリスは、司令長官室で荒れていた。
司令長官室の調度品などが壊れ散らかっていた。
「司令……」
「五月蝿い!! お前も、私を馬鹿にしに来たのか!?」
 如何やら、ホルギリスは馬鹿にされていたようだ。
「出て行け!!」
 兵士達も手を付けられない状況のようだ。

         ◇

「司令!! 本国から届いた資材で要塞の修理、完了しました」
 兵士は、報告した
「作業員に急速を与えよ!!」
「しかし、提督。 本国命令で、要塞の装甲をテクタイト板で覆えとのことです」
「兵士達に休息を与えるのは、先になるな……」
 アールフレッドは、申し訳なさそうに言った。
「兵士達よ、疲労の溜まっているところ申し訳ない。 もう一働きしてもらう。 本国からテクタイト板かが届いた。 其れを要塞の周りに張ってほしい。 無論、交代制でやってもらう。 第二班、第三班には、急速を与える」
 アールフレッドは、第二班と三班に休息を与えた。
「あの攻撃力、新装甲であるテクタイトでも防げるかどうか……」
 ガルマンの要塞は、24時間体制で改装が行われた。
兵士達も鞭打って作業に励んだ。

         ◇

「三千院くん」
 長官が、三千院を呼んだ。
「何でしょうか!? 長官!!」
「ヤマトが出撃した後、アクエリアス大氷球を消す部隊を決めてくれたまえ」
「確かに、あそこは機密の塊ですね」
 長官は、機密情報消去する部隊の選定を三千院に命じた。
「アレだけの質量です。 主力戦艦では、6隻ないと蒸発させられないでしょう」
「と、なると[春藍]になるか……」
「既に[春藍」の艦長に内意を伝えてあります」
「[春藍]にヤマト出撃後、アクエリアス大氷球の残骸を消す任に当たってもらう。 [春藍]艦長に伝えておいてくれ!!」
「了解!! [春藍]艦長に伝えておきます」
 アクエリアス大氷球の機密情報消去の準備は、整った。
ヤマト出撃後、[春藍]の波動砲で蒸発させるだけだ。


 ヤマト出撃まで後3日

第10章

 ヤマトの出撃が決まった翌日……
物資と食料等を積んだ連絡艇がアクエリアス大氷球と地球を往復していた。
「食料は、直ぐに冷蔵庫へ運べ!!」
 生活班は、食料や医薬品を艦内の所定の場所へ運んでいた。
其れも、半端な量ではい。 
「ヤマト農園の生産は如何だ!?」
「計画通りに生産しています」
「よし。 積み込み分と消費量を推測して生産調整しとけ!!」

         ◇

「皇帝陛下!!」
『貴殿の配下、ホルギリスが単独行動で貴重な艦を喪失させたな!?』
「はい。 監督不行き届きで申し訳ありません」
『まぁよい。 貴奴は、我が帝国でも血の気の多さは1、2を争う。 止むえ
んだろう……』
「奴には、罰を与えました」
『与えた罰というのは?』
『司令部の掃除であります』
『ブリュンスタよ』
「はっ!!」
『そなたの基地へ偵察艦隊を預ける。 其れを使って銀河系の情勢を調べるがよい』
「ありがとうございます」
『我が計画は、成功させねば成らぬ。 我らの前に立ちふさがる者は全てなぎ払え』
「畏まりました。 皇帝陛下万歳」

         ◇

「司令!! 皇帝陛下より命令です」
 兵士は報告した。
「読め!!」
「偵察艦隊は、直ちに進軍しマゼラン雲防衛基地へ向かえとのことです」
「よし。 全艦抜錨!! マゼラン雲防衛基地へ進路を取れ」
 大マゼラン星雲の遥かかなたに停泊していた艦隊が一斉に駆動炎をあげ動き出した。 旗艦である巨大空母と高速艦で構成された偵察艦隊だ。
「私は、あの馬鹿とは違う。 必ずや皇帝陛下の期待に添えて見せる」

         ◇

「良いか!? ヤマトの艦載機の歴史は分かったな」
 加藤は、戦闘機隊の隊員に講義をしていた。
「ヤマトには二種類の戦闘機が搭載されている。 一つは、通常のタイプ。 もう一つは雷撃タイプだ!! 通常タイプの主任務は、ヤマトへ近づく敵機を撃ち落すことだ」
「隊長、聞いた話ではバージョンUPしたとか……」 
「丁度、話に出たことだし説明する」
 新戦闘機について話す加藤。
「ヤマトに積み込まれる戦闘機は、言うまでもない。 最新型だ!!」
「最新型と言うと、コスモタイガーⅣですか?」
「あぁ。 コスモタイガーⅢを5年の歳月をかけて改良し誕生したコスモタイガーⅣだ!! コスモタイガーⅣは、従来の戦闘機とは違う。 小さいながらも波動エンジンが搭載されている」
 今度のコスモタイガーには波動エンジンが搭載されているようだ。
「武装も強力なものに変更されている。 其の最たるものがミサイルだ!! 特に、波動カートリッジミサイルは気をつけろ!! ヤマトの波動砲の1兆分の1といっても、敵艦を一隻沈める威力があることを肝に銘じておけ!!」
「はいっ」
 隊員達は、返事をした。

         ◇

「真田さん、全ての作業が終わり次第、アクエリアス大氷球に爆薬をセットしてください」
「分かった。 作業が終わり次第、爆薬をセットしておく」
 そう言って、爆薬の手配をする真田。
ヤマトを改装する、此の秘密ドックに最後の日が近づいていた。


 ヤマト出撃まで、後5日

第9章

「司令、要塞の火災、鎮火しました」
 兵士が、報告する。
消火開始から数時間後のことだ。
「提督、死傷者の収容終わりました」
「我が兵士の死傷者数は?」
「はい。 重軽傷者数200人、死者数50人です」
「思ったより多いな……」
「提督、本星より連絡!!」
「読め!!」
「輸送船団は、ガルマン時間12時に本星を出発。 到着は、5日後の15時
の予定との事です」
「宙域の監視を怠るな!!」

         ◇

「くそうっ」
「し、司令」
 ホルギリスは、脱出艇で命からがら基地へ帰ってきていた。
「司令!!」
「何だ!!」
 ホルギリスは、怒鳴り返す。
「ブリュンスタ大提督から通信です」
「出せ!!」
 スクリーンに現れるブリュンスタ大提督。
『ホルギリス!! ガルマンを挑発するといいながら返り討ちにあったようだな』
「くっ……」
『だから、単独行動は待てと言ったのだ!! 皇帝陛下に何ってお詫びをすればすむのか!!』
 ブリュンスタは、ホルギリスが身勝手な行動をした挙句、艦を失ったことを怒った。
『補充戦力は、送らん!! 現戦力で防衛せよ!! 其れから、罰として司令部の
掃除を命じる』
 ブリュンスタは、罰を言い渡した。
「はい」
 元気なく返事をするホルギリス。

         ◇

「三千院くん、春藍以下の艦隊の整備は如何かね?」
 長官が聞く。
「現在、機関をはじめとする改装計画の立案中です。 最終的には、機関の出力UPと波動砲と主砲の射程延長にとどまるはずです」
 改装の見込みを言う三千院。
「そうか。 改装にどのくらい掛かるか!?」
「防衛軍の全ての艦艇の改装が終わるのに二ヶ月ほど掛かります」
 防衛軍の艦艇は、1000隻近くある。
其の全てを整備するだけでも可也の時間を要する。
「短縮は出来ないのかね?」
「手抜きをして多くの将兵を失うわけにも行きません」
 嘗て地球は多くの将兵を失った事がある。
彼の白色彗星帝国戦役だ。
「しかし、地球には時間がない。 後、20日余りでハイペロン爆弾が落ちてくる」
「ハイペロン爆弾を地球に落ちる前に撃破するのは、強化した波動砲しかないでしょう」
 ハイペロン爆弾を撃破出来るのは波動砲しかないと言う三千院。
「波動砲か…… ヤマトも改装中だ」
「ヤハリ、戦力温存を考えるならヤマトに撃破させるしかありません」
「大改装でパワーUPしたヤマトの波動砲がどのくらいの威力があるか想像も出来ん」
「では、ヤマトに太陽系外で撃破させましょう。 太陽系外なら波動砲に桁違いの威力があっても心配要りません」
「よし。 直ちにヤマトの出撃日を決めよ!!」
 長官は、ヤマトの出撃日を決めるよう命じた。
「はい。 各種演習も計算に入れて、10日後の10月6日がいいでしょう」
「直ちにヤマトへ伝えよ!!」
「直ちに伝えます」

         ◇

「艦長、防衛軍司令部から通信です」
 通信班長の相原が言う。
「繋いでくれ!!」
「了解。 メインに出します」
 メインパネルに艦隊運営長官の三千院疾風が現れた。
古代は、敬礼をする。
『地球防衛軍司令長官の命令を伝える。 ヤマトには、10月9日の0930に出撃してもらうことになった。 ヤマトは、太陽系外で敵のハイペロン爆弾を波動砲で撃破後、敵の本星へ向かってほしい』
「分かりました。 春藍以下の主力艦隊は?」
『動かせん!! 本当は、ヤマトへ同行させてやりたいんだが、敵の襲来に備えて待機させておかなければならない。 そう言うことだから出撃準備を急いでくれ』
「改装作業を急がせます」
『有無。 今回も司令部の力不足でヤマトへ重荷を背負わすことになってすまん』
「では、いろいろ準備ありますので……」
 古代は、敬礼をした。
それに対して三千院は、答礼をしスクリーンから消えた。

「相原、艦内放送をしてくれ!!」
「了解」
 淡々と作業をする相原。
「此方、艦長。 ヤマトの乗員各員に伝える。 我が宇宙戦艦ヤマトは、10月9日0930に出撃する。 もう一度、繰り返す。 本艦は、10月9日0930に出撃する。 
各人其のつもりで準備に当たってくれ!! 其れから、幹部の者は直ぐに中央作戦室に集まってくれ!!」
 古代は、乗員全員に放送を流した。


 ヤマトは、出撃に向かって動き始めた。 数年の眠りから覚めるときが近づいてきた。
ヤマトの出撃日は、奇しくも大マゼラン星雲へ旅立った日と同じ10月9日。

 ヤマトの出撃まで後10日