第5章

「技師長、次元潜行用のエンジンは何処へ設置しますか?」
 作業員が真田に聞いた。
「せっかく調整したエンジンに組み込む時間はあるが再調整をし直さないといかん。どっちにしろ波動砲の調整もあるからエンジンに組み込め!!」
 真田に指示されて作業を行う作業員。
作業員は制御パネルを開け、次元潜行用の制御部品を組み込む為、回路を弄くる。
「制御パネルに差し込むだけで良いんだぞ!!」
 既に、制御パネルには次元潜行用の制御パネル設置用のスペースが設けられていた。

「技師長、之だけのスペースに回路を組み込むのですか?」
 ヤマトの機関室は、かなり広い。
其のスペースに制御パネルを設置するだけでも大変なのだ。

 また、波動砲の制御室でも改装が行われていた。
瞬間物質移送機を波動砲に組み込む作業だ。
「折角、改装が終わったと思ったら、また改装かよ」
 不満を言う作業員。
「仕方ないだろう。 防衛軍本部の命令では……」
 ヤマトの緊急改装の命令は、防衛軍司令部から出されたものだった。
既にヤマトは、之までの改装で船体は二倍以上に大きくなっている。
「しかし、組み込むのも骨が折れそうだ」
「あぁ。 出撃まで時間がないと言うのに……」

         ◇

「皇帝陛下、編成した主力艦隊の指揮は誰に執らせましょうか?」
 グリジアーノが聞く。
「グランフィッシュに執らせよ!!」
「では、グランフィッシュに出撃を命じます」
 グランフィッシュは、数人居る副司令長官の一人だ。
普段は、指揮する艦隊を持たないが、こうして有事の際には、皇帝の命で司令長官に指名されるのだ。

「グランフィッシュ!!」
「お呼びですか!? 総司令長官」
「君に皇帝陛下から命令が下った。 新編成された主力艦隊を率いて銀河系へ侵攻してくれ」
「私よりも優秀な副司令長官が何人も居るでしょう!?」
「其れは、知っている。 皇帝陛下の御そばに優秀な司令が必要なのだ」
 苦渋の選択を説明するグリジアーノ。
「分かりました。 其の任、引き受けましょう」
「君に預ける戦力は、帝国の全戦力の3割だ!!」
「皇帝親衛艦隊や殲滅艦隊とほぼ同じ戦力ではありませんか」
 ガルバート帝国の艦は巨大な戦艦が主力である。あまりの巨艦故、運用コストがすごく掛かるのだ。
「グランフィッシュ、明日出撃いたします」
「途中で各戦線から引き抜いた戦隊が加わる。 合流しつつ進軍せよ」
「ガルバート帝国に栄光を!!」
 グランフィッシュは、ガルバート帝国式の敬礼をして出撃準備に向かった。

         ◇

「藤堂長官!! 話は、聞いたよ」
「大統領のお耳にも入っておいででしたか!?」
「有無。 此度の件、地球だけの問題では終わらん」
 長官は、大統領と話している。
「ガルマン・ガミラスのデスラー総統と話したのかね」
「既に話をしある技術の提供を受けヤマトの改装を急いでいます」
「彼らには、過酷な運命を背負わすことになるな……」
「過酷な運命とは、何ですか?」
「強大な軍事力を持つ帝国とたった一隻で戦わすという運命を」
「ヤハリ、大統領は、未来を……」
 現大統領は未来視の力を持っているようだ。
「其の未来は、如何いうものなのですか?」
「多くの血が流れ屍の山が出来る。 多くの犠牲を出して戦いは終わる」
 大統領の未来視で敵味方に多くの犠牲者が出るという。
勝者は、ないと言うらしい。
「そうなると、春藍を旗艦とする主力艦隊を同行させるわけにはいきませんね」
「前線に行くのは、ヤマトだけだ!!」
「しかし、大統領。 ヤマトは、再建時より巨大化しています」
「長官、ヤマトへ空間騎兵隊特殊戦闘部隊を乗り込ませたまえ」
「大統領、地球最強の空間騎兵隊を乗り込ませるのですか!?」
「そうだ、之は大統領命令だ」
「彼らに居場所があるでしょうか?」
「彼らなら期待以上の働きをする」
 断言する大統領。
「彼らを乗せるということは、食料の追加積み込みをしないといけません」
「長官、直ちに命令を伝えよ!!」
「はい。 大統領」

         ◇

「隊長!! 我が部隊に命令です」
「誰からの命令だ!?」
「防衛軍司令長官からです」
「芹沢、命令内容は何だ!?」 
「其れが、ヤマトへ乗り組めっと」
「ヤマトに乗り込めだぁ? 何で誇り高き空間騎兵隊の俺たちが乗らんやならんのんだぁ!?」
「偉大な斉藤始隊長と同じヤマトへ乗り込める機会は滅多にありませんよ」
「そうだな、こんな機会にどとないかもしれん」
 隊長は、命じる。
「全員、フル装備の集合!! 集合の後、英雄の丘へ行く。芹沢、酒を用意しろ!!」
 全員、ヤマトへ乗り込む為、装備一式を持って英雄の丘へ向かった。


 空間騎兵隊特殊戦闘部隊は、斉藤始の碑の前に整列した。
隊員たちが、順番に酒をかけていった。
「総員、偉大な空間騎兵隊斉藤始隊長の霊へ敬礼!!」
 隊員たちが敬礼をする。
「敬礼やめ!! 此処に眠る同胞達とささやかな宴会をした後、秘密基地へ行く」
 隊員達は、ささやかな宴会の後、アクエリアス大氷球へ向かった。
ヤマトへ乗り組む為に……


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