第20章

 コスモタイガーは、編隊を組んで飛行する。
敵の監視衛星群を破壊する為に。
「敵、監視衛星を確認。 全機、ミサイル安全装置解除!!」
 加藤は、誤射を防ぐ安全装置の解除を命じた。
「全機、攻撃開始!!」
 加藤の命令で、一斉にミサイルを発射するコスモタイガー。
発射されたミサイルは、敵監視衛星に突き刺さる。
 ミサイルが突き刺さり爆発する監視衛星。
「よし。次を攻撃するぞ!!」
 再び攻撃態勢に入るコスモタイガー。
其の時、一条の光がコスモタイガーを襲う。
「全機、攻撃中止!! 全速離脱」
 加藤の命令で離脱を開始するコスモタイガー。
離脱するコスモタイガーにビームの雨を見舞う謎の衛星。

「艦長!! 加藤より通信です」
 相原が、報告する。
「通信回路開け!!」
『此方、加藤!! 敵の戦闘衛星の攻撃を受けています。 ヤマトによる撃破をお願いします』
「加藤、もう少し持ちこたえろ」
『急いでください。 あまり、長引かせられません』
「わかった。 戦闘衛星の位置を送ってくれ!!」
『了解。 直ちに座標を転送します』
 加藤が、言って直ぐに戦闘衛星の座標が送られてきた。
「座標、受け取りました」
「加藤、安全宙域まで後退して待機!!」
『了解!! 安全宙域で待機します』
「宮川!! 座標を元に各所に指示を出せ!!」
 古代は、副長の宮川に命じた。
宮川は、各所に指示を出した。
 其れを受け、斉藤が命令を実行する。
「全艦戦闘配備!! 全主砲発射用意!!」
 戦闘員が艦内を駆け回る。
各砲がうねりをあげ、目標へ砲身をあわせる。
『此方第一砲塔、発射準備完了』
『第二砲塔発射準備完了!!』
 各砲塔から発射準備完了の知らせが来る。
「目標、敵戦闘衛星。 発射!!」
 ヤマトの主砲が一斉に火を噴いた。
ヤマトの主砲は、戦闘衛星を次々撃ちぬいていった。
 ヤマトに撃ちぬかれ次々爆発していく戦闘衛星群。
其れでも、攻撃してくる戦闘衛星。
「コスモタイガー、4番機、22番機、30番機、44番機、帰還せよ」
 左舷戦術指揮席の近藤泰が命令した。
彼は、航空管制も担当しているのだ。
 呼ばれた機が帰ってくる。
帰ってくる機は、煙を吹いている。
『此方、格納庫!! コスモタイガー4番、22番、30番、44番機着艦!! 消火及び修理に当たります』
 格納庫から報告が来る。
「レーダーに反応!! ビデオパネルオン」
 サーシャがビデオパネルに映像を投影する。
映し出されたのは、巨大な戦艦が絶対に破れない垣根を造っている姿だった。
「此のまま、近づけば危険だ!! 副長!!」
「はい。 斉藤!! 波動砲発射用意!!」 
「了解!! 波動砲発射用意!! エネルギー充填率300%」
 斉藤が、電算室に指示を飛ばす。
「此方、航空管制!! 波動砲を使う為全機帰還せよ!!」
『此方、加藤!! 了解した全機帰還する』
 加藤率いるコスモタイガー隊がヤマトへ帰還してくる。
「波動砲強制注入機出力50%。 エネルギー注入率60%」
 徳川が、注入作業を急ぐ。



「司令、ヤマトがやってきました」
 兵士が報告した。
「軌道上の超巨大戦艦部隊へ!! 全艦戦闘配備!! 全力でヤマトを撃沈せよ!!」
 ホルギリスが命じた。
「司令!! ヤマトに高エネルギー反応です」
「何!? 阻止しろ!!」
「無理です。 まだ、射程圏外です」
「地上のミサイルを発射しろ!!」
「はっ!!」
 バラン星から超大型ミサイルが次々発射された。



「レーダーに反応!! バラン星から発射されたミサイルです」
 サーシャが報告する。
「波動砲発射準備完了!!」
 波動砲の発射準備が整う。
「ターゲットスコープオープン!! 電影クロスゲージ、明度20」
 発射シークエンスが最終段階へ入る。
「対ショック、対閃光防御!! 発射10秒前!!」
 全員が目を保護するゴーグルを装着する。
「5、4、3、2、1、発射ぁっ!!」
 斉藤が、トリガーを引くとヤマトの艦首波動砲口から勢いよくエネルギーが発射された。
 発射された波動砲は、地上から発射されたミサイルを飲み込みながら敵の巨大戦艦へ襲い掛かった。



「艦長!! 敵の波動砲が来ます」
 兵士が叫んだ。
「回避しろ!!」
「無理です。 各艦と連絡通路と繋がっているので身動きが取れません」
「バリア展開急げぇ!!」
「バリア展開も間に合いません」
 其の直後、波動砲の直撃を受けた。
「ぐぅわぁぁぁっ!!」
 直撃を受けた艦を中心に周囲の艦へ誘爆が広がっていく。



 其の頃、ガルマンのバラン奪還艦隊は・・・…
「司令!!」
「如何した!?」
「バラン星方面で爆発反応を確認しました」
「爆発反応だと!!」
「はい。 タキオンエネルギーの解放も確認されました」
「ヤマトだ!! 我らは、遅れを採ってしまったようだ・・・…」
「司令。 如何しますか!?」
「決まっているだろう…… 全艦潜航!! 之より戦闘宙域へ突入する」

 バラン宙域において、三つ巴の戦いが始まろうとしていた。

第19章

 ヤマトは、バラン宙域に近づきつつある。
ガルマン艦隊が必死で追いかけてきている事をまだ知らない。
「艦長!! 間もなく第一級戦闘体制移行時間です」
 副長が報告した。
古代は、マイクのスイッチを入れ告げた。
「此方艦長…… 之よりヤマトは、第一級戦闘体制へ移行する。 総員、配置につけ!!」
 艦内にアラームがなり戦士達が其々の持ち場へつく為に駆けずり回る。

「急げぇ!!」
「遅れんな!!」
「敵艦は、俺たちの班が静めてやるぞ!!」
 皆、口々に駆け回り自分達の持ち場に飛び込んでいく。



「将軍!! まだ、ヤマトに追いつけません」
 ワープにワープを重ねてもヤマトに追いつけないがルマン艦隊。
「ワープだ!! 次のワープの用意だ!!」
「将軍、これ以上のワープは、不可能です」
「不可能でもヤレ!! 之は、デスラー総統の命令でもあるのだぞ」
「では、30分ほど兵士達に時間をください」
「そんな時間はない」
「機関整備の為の時間です。 エンジンが不調になったらいけません」
 機関整備を理由に兵士達の休憩時間を稼ごうとする副官。
「いいだろう。 30分後には大ワープを行うからな……」
「有難うございます。 将軍」
 副官は、兵士達を休ませる口実を得たのだった。
其れから、30分。 兵士達は、整備をするふりをしつつ休憩を取った。
「司令。 各機関の整備、完了しました」
「よし。 バラン宙域へ向けて最後のワープを行う」
 一斉にワープ空間へ消えるガルマン艦隊。
彼らは、ヤマトの恐るべき戦闘力を目の当たりにする事をまだ知らない。



「島!! 停止だ!! 敵の監視衛星を調査する」
「了解。 旗艦停止!!」
 島は、制動をかけた。
ヤマトが、其の巨体を停止させる。
「電算室!! 監視衛星がないか確認急げ!!」
『了解!! 確認急ぎます』
 電算室から返事が変えてくる。



「中嶋!! 遠野!! 敵の監視網がないか確認を急げ!!」
 電算室長が二人に命じる。
探査を始めて直ぐに声が上がった。
「電算室長!! ヤマトの前方1000宇宙キロに監視衛星群を発見しました」
「監視衛星の数は?」
「約、200ほどです」
 敵の監視衛星の数は、200を数えた。
「既に、此方の動きを掴まれていると見たほうが良いな」
 そう言って、報告する電算室長。



『……と言うわけで、敵に掴まれている可能性が高いです』
「そうか…… 引き続き調査し、随時報告せよ!!」
『はい。 引き続き調査します』

「艦長。 既に敵に我々の位置を知られているようです」
「加藤!! 出撃できるか?」
『艦長。 何時でも発進できます』
「よし。 コスモターガー隊発進!!」
「コスモタイガー隊発進!!」
 命令を受けて発進するコスモタイガー隊。



「コスモタイガー隊全機発進!!」
 加藤が、全機に指令する。
「全機、よく聞け!! 俺たちの任務は、敵の監視衛星の破壊だ!! 当然、警戒も厳しいだろう。 単独行動は、するな!! 複数機で編隊を組で攻撃しろ!!」
 加藤が、隊員に注意を促す。
今、戦いの火蓋が切られようとしている。

第18章

「ガルバート帝国のバラン基地の全兵士に告ぐ!! 数日後、ヤマトと総力戦を行う。 凄まじい戦いが予想される。 皇帝陛下の為に地球を我らの手中に収めるのだ!!」
「「「おおぉぉぉっ」」」
 ホルギリスは、兵士達の士気をあおる。
「いいか!! 勝利は!?」
「「「「ガルバート帝国に」」」」
「宇宙の支配者は!?」
「「「「皇帝陛下」」」」
「そうだ。 偉大なる皇帝陛下だ!! 支配者たる我らから見て地球人は?」
「「「「「原始人」」」」」
「「「「文明遅れ」」」」
「「「「猿人」」」」
 兵士達は、見下した言葉を次々言う。
「地球人は、我らに奉仕する事が有史以来の決まりごとだ!! 我らに歯向かう者は容赦なく殺せ!! 宇宙の支配者が誰であるか、支配されるのがどっちであるかをな……」



 圧倒的な戦力で待ち構えている事も知らずにヤマトは、バラン星に近づきつつあった。
「副長!! 後、3時間でバラン宙域に入ります」
 島が、副長に報告した。
古代は、艦長室に下がっていていない。
「艦長!! 至急第一艦橋へお越しください。 間もなくバラン宙域に入ります」
 宮川が放送で呼ぶと古代は、艦長室から降りてきた。
艦長席に着いた古代は、命じた。
「総員、第二級戦闘体制!!」
「第二級戦闘体制へ」
 ヤマトが第二級戦闘体制へ移行した事が艦内放送で伝えられる。
平時から戦闘体制へ移行しつつある。
「此方、艦長!! ヤマトの戦士諸君に告ぐ。 本艦は二時間後に第一級戦闘体制へ移行する。 準備を怠るな!! 加藤、コスモタイガー隊は万全か?」
『整備は、抜かりありません』
 加藤の返事が返ってくる。
「斉藤!! 各兵装問題ないか?」
「航行中にも旋回テストを自動、手動でやりましたが問題ありません」
「徳川!!」
「はいっ」
「機関は、問題ないか?」
「左右両方のエンジンは、問題なく動いています」
「よし。 中央作戦室!!」
『何でしょうか!?』
「作戦は、出来上がったか?」
『今までに何度もシミュレートしています』
「今のところ、どのプランが当方の被害を軽減できるか?」
『サーシアの力を借りて立案した15号作戦が良いかと思います』
「15号と言うと艦載機で奇襲を掛けつつヤマトは、次元潜行して敵に接近、殲滅する作戦だったな……」
『はい。 敵も奇襲を警戒しているはずです』
「艦載機を危険にさらすわけにもいかないな……」
(波動砲は、撃たせてはくれないだろう)
「艦長!! こんな事になるかもと思って主砲の射程を1000万宇宙キロに伸ばしておいた」
 真田の専売特許、“こんな事もあろうか”が炸裂した。
「何時の間に、射程を延ばしのですか?」
「いや。 土方たちの提言でな……」
 主砲の射程延長を提案したのは、土方と山南だった。
「土方と山南が!?」
「聞くところによると第二砲塔の沖田との三人の提案だ」
「まさか……」
「其のまさかだ!! 沖田提督の孫だ」
「沖田艦長の」
 古代は、納得できた。
彼の沖田十三の孫だったからだ。 
「彼は、土方や山南に負けず劣らず優秀だぞ」
「今すぐに作戦室に呼んで、作戦を練り直させます」
 緊急に作戦を練り直す事になったヤマト。
2時間で、新たな作戦が練りなおせるのか?



「デスラー総統!! 我が軍の監視衛星がヤマトの出撃を捕らえました」
 キーリングがデスラーに報告する。
「そうか…… 出撃して行ったか」
「はい」
「キーリング!! ウラウルフを呼べ」
「直ちに呼びます」
 そう言ってウラウルフを呼び出すキーリング。
「お呼びですか? 総統!!」
「君に頼んだ仕事は、出来たかね?」
「はい。 苦労しましたが完成しました」
「よし。 直ちにバラン奪還艦隊のグラルバジャルに出撃を命じろ!! 戦闘開始前にヤマトと合流せよと」



「将軍!! 全艦発進準備整いました」 
 バラン奪還艦隊の副官が報告した。
「よし。 全艦発進!!」
「全艦発進!!」
 ガルマン星からバラン奪還艦隊が飛び立っていく。
激戦が待ち構えているバラン宙域へ……
 艦隊が飛び立って少しするとアラームがなった。
ワープ可能宙域に出た合図だ。
「全艦、バラン宙域へ大ワープ!!」
 グラルバジャルは、ワープを命じた。
命令と共に次々、ワープ空間へ消えていった。
(ガミラスに弓を引いたことを後悔させてやる)
ワープ中、手から血がにじむくらい強く握っていたグラルバジャルの姿があった。
 果たして、彼らはヤマトが戦闘を開始する前に合流する事が出来るのだろうか?

第17章

「司令長官!! ガルバリア戦隊が戻ってまいりました」
 偵察艦隊の参謀が報告した。
「帰還したら、司令官を私のところへ来るよう伝えておけ!!」
「はっ!!」
 少しして、司令部にガルバリア戦隊の司令官が現れた。
「偵察艦隊司令長官がお呼びだ!!」
「司令長官が!?」
「旗艦の司令長官室へ行け!!」
「はいっ。 参謀閣下」



 偵察艦隊旗艦に其の司令部はある。
そして、其の旗艦にガルバリア戦隊の司令は、呼ばれた。
「司令長官!! お呼びですか!?」
「偵察の結果を報告してくれ!! ガルバリア戦隊司令、グリモアー」
「ご報告します。 ご命令どおり太陽系近海で偵察任務を遂行しました」
「ハイペロン爆弾は、如何なった?」
 ハイペロン爆弾のことを効くグリゴール。
「では、之をご覧ください。 我が部隊が撮影した映像です」
 そう言って、映像を見せるグリモアー。
「何だ!? アレは……」
「分かりません。 謎の超兵器で我が帝国のハイペロン爆弾を粉砕後に現れました。 深入りは危険と判断し、引き上げました」
「其の判断は、正しかっただろう」
 映像を見て語るグリゴール。
「此の情報は、本国に送る。 皇帝陛下の判断を仰ごう」



「皇帝陛下、偵察艦隊から緊急連絡です」
「読め!!」
「はい。 我が帝国のハイペロン爆弾、敵の超兵器で粉砕された直後、ブラックホール発生せし。 安全の為、撤退し候。 皇帝陛下の判断を仰ぎたきし候」
 電文の内容を読むグリジアーノ。
「出てきたか……」
「はぁ?」
「我が帝国を崩壊へと誘う悪魔の戦艦よ」
「悪魔の戦艦ですか?」
「そうだ、あの戦艦によってバラン防衛基地は陥落する」
「地球と我が帝国とでは、埋めようの無い圧倒的な力の差があります」
「彼のズォーダーも圧倒的な力の差がありながら負けておる。 力の差など当てに出来ん。 最後に勝つのは覚悟の差だ!!」
「陛下、返信は如何しますか?」
「『敵を格下と侮るな!! 侮れば、足元をすくわれる』とな……」
「はっ。 直ちに返信します」



「う~む。 周囲に残骸はないな」
 ヤマトは、撃破したハイペロン爆弾の状況を確認していた。
「周囲に残骸はありません。 撃破出来たと思われます」
「よし。 引き続き探査をしろ!!」
 古代は、電算室の安部に命じた。



「司令!! 要塞の修理、完了しました」
 ガルマン兵は、報告した。
「よし。 全兵士に交代で休みをとらせろ!!」
「はっ」
 要塞の修理改修を終えた兵士に休みを与えるよう言ったアールフレッド。
司令席で一息つくアールフレッド。
「司令こそ、休みを取られては?」
 副官が、司令に言う。
「そうだな…… 後の指揮は、任せた」
 そう言って、アールフレッドは、司令長官室へ下がっていった。



『ホルギリス!!』
「はっ!!」
『後、5日余りでヤマトが来る。 準備は、良いだろうな!?』
「既に準備は出来ております」
『お前の血の気の多さを存分に発揮する時が間もなく来る。 バランの地上にミサイルの配備は済んだか?』
「はい。 バランの地上に数千のミサイルを配置完了しております」
『偵察艦隊からの情報だ!! 参考までに聞くがいい』
 そう言って、偵察艦隊司令に変わるブリュンスタ大提督。
『ヤマトに波動砲を使わせるな!! 使わせる布陣をすれば、あっという間に雌雄が決するだろう。 常にバランを背に戦え。 波動砲を使える位置に布陣させるな』
『以上が、偵察艦隊からの情報だ。 其れを生かすも、殺すも、お前しだいだ! ホルギリス!!』
「はっ。 偉大な皇帝陛下の為に……」



作戦室で、デスラー、キーリング、ドメラー、フラーケン、ウラウルフが集まって会議を行っていた。
「総統、バランを奪還する部隊ですが……」
 キーリングがデスラーに聞いた。
「ドメラー。 艦隊総司令として案は無いか?」
「はい。 奪還は、奇襲で持ってしなければなりません。 敵も奇襲を警戒指定は図です。 其処で、ガルマンウルフの艦隊を出すのが一番です」
「お待ちください。 ドメラー元帥!! 幾ら我が艦隊がステルスでも射程が足りなければ直ぐに壊滅してしまいます。 せめて、総統閣下の艦などに装備されている超射程兵器が無ければ……」
「確かに、ガルマンウルフの言うとおり超射程、超破壊力のある装備を付けずに出撃させることは、技術者としてもお勧めできません」
「ウラウルフ!! 其れを一日で成し遂げることは、出来るか?」 
「全ての動力をつぎ込めば、100隻ほど出来るでしょう」
「よし。 直ちに全作業をバラン奪還艦隊の改装に切り替えろ!!」
「はっ!!」
 ウラウルフは、次元潜行戦艦を改造するため作戦室を出て行った。
ステルス次元潜行戦艦をステルス次元潜行狙撃戦艦に改造するために……

第16章

『此方、電算室!! 恐ろしい速度で接近するハイペロン爆弾を捕らえました』
 電算室から報告がある。
「副長の宮川だ!! 詳しく報告してくれ」
『ヤマトの進行方向、左10度から接近しています。 後、30分で接触します』
「わかった。 艦長に報告する」
 そう言って、宮川は古代を呼んだ。
「艦長、至急第一艦橋へお越しください。 ハイペロン爆弾が接近中です」
 少しして、古代が艦長室から降りてきた。
「宮川!! 総員を配置に就かせろ!!」
「はい。 総員戦闘配備!!」
 ヤマト艦内に警報が鳴り響く。
「島、停止だ!!」
「よおそろ」
 島は、操縦桿を押してヤマトを止めた。
「斉藤!!」
「はいっ!!」
「トランジッション波動砲発射用意!!」 
「機関長!! トランジッション波動砲へのエネルギー注入お願いします」
「トランジッション波動砲へエネルギー注入開始!!」
コンソールパネルで波動砲へエネルギーを注入開始する徳川。
「トランジッション波動砲エネルギー注入50%」
 コンソールで注入状況を確認する徳川。
「波動砲薬室内、圧力上昇!!」
「チャージャ接続!!」
 チャージャを使って充填を急ぐヤマト。



「司令、1光年先に“ヤマト”を捕捉しました」
 ガルバリア戦隊の兵士は、報告した。
ガルバリア戦隊は、ワープで先回りしていた。
「ハイペロン爆弾、本戦隊の後方、3光年に接近!! ヤマトと接触まで後、10分!!」
「万が一に備え、ハイペロン爆弾とヤマトの軸線から退避!!」
 退避を命じる司令。
「ハイペロン爆弾、通過します」
 退避した戦隊の遥かかなたをハイペロン爆弾が通過する。



「トランジッション波動砲発射準備完了!!」
 斉藤が報告する。
「トランジッション波動砲の有効射程距離まで30秒!!」
「トランジッション波動砲発射30秒前!! 対ショック対閃光防御!!」
 メインクルーがゴーグルをつける。
波動砲の閃光から目を保護するためだ。
「電影クロスゲージ、明度20」
 斉藤は、照準機を覗いてハイペロン爆弾へ艦首を合わせる。
「トランジッション波動砲発射十秒前!!」
 カウントダウンを開始する斉藤。
「5、4、3、2、1、発射ぁっ!!」
 カチッと斉藤がトリガーをひいた。
すると凄まじいエネルギーがヤマトから発射された。
 発射されたエネルギーは、ガルバート帝国のハイペロン爆弾を飲み込み破壊した。
 しかし、凄まじいエネルギーの為、ブラックホールが発生した。



 遥かかなたで偵察していたガルバート帝国の艦にも衝撃が襲った。
「司令、異常重力波を検地しました。 ブラックホールです」
「ブラックホールだと!?」
「はい。 ヤマトが、波動砲でハイペロン爆弾を撃破した直後に発生しました」
「撤収だ!! ヤマトが出てきたことだけでも収穫だ」
「はっ!!」
 一斉に駆動炎を吹き上げて帰って行くガルバリア戦隊。
 ヤマトは、此の部隊の存在に気づいていない。

第15章

「ブリュンスタ大提督!! 間もなく偵察艦隊が到着します」
 兵士が報告した。
「よし。 此処へ案内しろ!!」
「はい」
 兵士は、直ぐに準備に掛かった。

「全艦減速!!」
 グリゴールは、減速を命じた。
基地が近づいてきたのだ。
 メインの噴射を止め制動に入った。
速度を落とし基地から伸びる連絡管へゆっくりと近づいて止まった。



「ワープ準備完了!!」
「波動エンジン、ワープ出力へ移行します」
 徳川が、エンジンの出力をワープへ移行させた。
「総員ベルト着用!! ワープ30秒前」
 ワープに向けてのカウントダウンが始まる。
「ワープ自動装置セットオン」
「ワープ!!」
 島がワープスイッチを入れるとヤマトは、ワープ空間に消えた。
ワープ空間に消えたヤマトは、そこで更にワープした。
 ヤマトは、通常空間に出る前にワープ空間に戻ってきた。
そして、ヤマトは通常空間に姿を現した。
「ワープ終了!!」
 島は、ワープ終了を報告した。
「各機関チェック!!」
 真田が、各機関をチェックする。
『各機関異常なし』
「艦長、各機関異常ありません」
「総員直解除!! 順次交代で休みを取れ!!」
 古代が総員直解除を伝えた。
「電算室!!」
 宮川が、電算室を呼び出す。
『此方、電算室』
 電算室長の金城零次が応答する。
「ハイペロン爆弾との接触時刻は?」
『明日、3030です』
「後、12時間か……」



「司令、間もなくハイペロン爆弾が通過します」
 兵士が報告した。
「そうか…… 到着早々で悪いが偵察戦隊を出してくれ!! グリゴール」
「どの戦隊を出しましょうか?」
「なるべく足が速いのがいい」
「では、我が偵察艦隊で最も足の早いガルバリア戦隊を銀河系へ出します」
「最新鋭部隊を出すまでもないだろう?」
「万全には、万全を期すべきです」
「よし。 直ちにガルバリア戦隊を派遣せよ!!」
「はっ!! ガルバリア戦隊、偵察に赴け!!」
 グリゴールは、命じた。
大マゼラン雲の基地から偵察艦隊所属ガルバリア戦隊が発進していった。



「司令、マゼラン雲防衛基地から通信です」
 通信兵が言う。
「出せ!!」
『たった今、我が基地をハイペロン爆弾が通過した』
「ハイペロン爆弾?」
『そうだ!! だから識別信号を出しておけ。 其処を通るのは、6時間後だ』
「いよいよ、地球への攻撃ですか!?」
『偵察艦隊のガルバリア戦隊の調査を待て!!』
「何故ですか!! 最新鋭部隊を引っ張り出さなくても……」
『お前は、一度、大事な艦を失った上に基地の存在を敵に知られている。 其れだけでも、出す価値がある』
 最新鋭の偵察部隊を出す価値があると言うブリュンスタ大提督。
『お前は、偵察部隊の報告を元に基地を強化することだ!!』
「何故、強化しなければならないのですか!? 現状でも十分ではないですか!!」
 十分だというホルギリス。
『皇帝陛下の命令だ!!』
「皇帝陛下の!?」
『そうだ!!』
 ホルギリスも皇帝陛下の命令だと言われたら意見することは出来ない。
「わかりました。 命令どおり基地を強化します」
 通信が切れるとホルギリスは、命じた。
「バラン星宙域の外に監視衛星を設置しろ!! 後、殲滅機雷も敷設して置け!!」
 今また、バラン星の基地が強化されようとしている。

第14章

「左舷前方に敵艦発見!!」
 サーシアが、言う。
其の敵とは、ヤマトの演習相手、[春藍]だ。
「宮川!!」
「全艦戦闘配備!!」
 宮川は、戦闘配備を命じた。
ヤマトに警報が鳴り響く。 艦内を戦闘員が慌しく行き来する。
「全艦戦闘配備完了!!」
 斉藤が、戦闘配備完了を報告する。
「遅い!!」
 遅いという宮川。
「技師長!! 左舷機関室付近に被弾!!」
「修理班、第一装備で現場へ急行!!」
 被弾といってもセンサーから命中判定が出ると発炎筒が作動する仕組みなのだ!!



「敵艦に一発命中!!」
 [春藍]も実戦同様の訓練が行われていた。
「一発だけでは駄目だ!! 命中点を逸らしているではないか!!」
 兵士を叱咤する艦長!!
「敵は、いまだに健在しているではないか」
 ズズゥンと衝撃がくる。
「艦首拡散波動砲に被弾!!」
「何!? 修理は?」
「駄目です。 制御室がやられています」
 之も演習だから実際に使用できないわけない。
「戦闘力0.50を切りました」
「残りで何としろ!!」
「機関出力0.20に減衰。 航行速度維持できません」
 次の瞬間、艦橋の電気が消えた。
撃沈されたと言うことだ。
「各機関チェック!!」
 艦長は、命じた。
「各機関異常ありません」
「異常なしか…… ヤハリ錬度の差か!?」



「艦長!! [春藍]から通信です」
 相原が言う。
「出してくれ!!」
「了解。 メインに出します」
 メインスクリーンに出る[春藍]艦長。
『さすがは、ヤマト。 錬度が違います』
「我々のほうこそ、お世話になりました」
『お力になれて光栄です。 本艦の問題点も探せました』
 礼を言う[春藍]艦長。
『之より[春藍]は、地球へ帰還します。 ヤマトの航海の安全を祈ります』



「総員、上甲板へ!!」
 [春藍]艦長は、命じた。
[春藍]の乗員が上甲板へ集まる。
「総員、ヤマトへ敬礼!!」
 駆動炎を吹き上げて旅立つヤマトを[春藍]の乗員は、甲板で見送った。
其れは、[春藍]のレーダーから消えるまで続いた。
「総員、配置に戻れ!! 之より地球に帰還する」
 艦長は、命じた。
「(偉大な提督たちの子が行く…… 偉大な提督たちよ、あの若者達を守りたまえ)」
 [春藍]艦長は、念じた。
ヤマトに乗り組んだ若者達が無事帰ってくるように……。



「総員に告ぐ!! ヤマトは、1900にワープを行う。 各人、其のつもりで作業に当たれ」
 島が、艦内放送で言う。
「艦長!! 此処で、超ワープ航法のテストをしたいのですが……」
「超ワープ航法!?」
「簡単に言うと、ワープ中にワープするということです」
「安全の確証は!?」
 安全性を問う古代。
「心配ない。 理論は、六連波動エンジンを作ったときに完成していたんだ!! だが、エネルギーを大量に必要とするから装備しなかっただけだ」
「早速実行に入ってくれ!!」
「了解。 島、超ワープ航法の準備だ!!」
 真田が、島に超ワープの準備を促す。
「超ワープ航法の準備に入ります。 総員、ワープ準備!!」
 島が言って、アラームを鳴らす。
「此方、真田。 此れから超ワープ航法のテストを行う。 衝撃が大きいので事故に注意しろ!!」
 長ワープ航法の準備が進められるヤマト。
今、新技術を導入した超ワープ航法が行われようとしている。


 ガルバート帝国のハイペロン爆弾と接触するまで後、1日。

第13章

「総員に告ぐ!! 本艦は、極秘任務の為0830に発進する。 配置に就け!!」
 [春藍]の艦長は、命じた。
「総員配置につけ!!」
 艦内にアラームが鳴り響き乗員が慌しく行き来する。
艦長は、艦長席から命令を発する。
「波動エンジン始動!!」
 [春藍]の二基のエンジンがうねりを上げる。
「艦長発進します」
 操縦士が言う。
艦長は言わずに頷いた。
「戦闘指揮!! 波動砲は、0940に発射だ!!」
「はい」
 [春藍]で予定通りの行動の準備が粛々と進められる。
[春藍]は、改装中のドックから飛び立って軌道上へ上っていった。

         ◇

 アクエリアス大氷球では、ヤマトが出撃準備を完了していた。
「艦長!! 艦内各機構の異常ありません」
 技師長が報告した。
「操縦関係異常ありません」
 島が報告した。
「通信関係、異常ありません」
「各兵装、問題ありません」
「レーダー異常ありません」
 第一艦橋のクルーが次々に報告した。
古代は、艦長席で時計を見ながら待つ。
「艦長、地球防衛軍司令部から通信です」
 相原が言う。
「パネルに出してくれ!!」
「了解!! パネルに出します」
 メインパネルに長官の姿が浮かび上がった。
長官だけではなく、防衛軍首脳が全員いた。
『古代!! いよいよだな……』
「はいっ」
 古代は、敬礼をし長官は答礼をした。
『ところで古代、5分後に地球連邦大統領閣下から君たちに激励のお言葉がある』
 そう言って、通信は一旦切れた。
古代は、マイクを取り艦内に放送を流した。
「ヤマトの全乗組員に告ぐ!! 5分後に地球連邦大統領より激励のお言葉がある。 手の空いている者は静かに聴いてくれ!! 機関員は、作業を進めながら聞くように」
 そして、5分後映像が現れた。
『私は、地球連邦大統領イワン・フォン・シュピッツ・アインヘルンだ。 君たちを未知の宇宙へ送り出す張本人である』
 大統領は、話を続ける。
『既に敵が放ったハイペロン爆弾の事は知っていると思う。 ヤマトには、太陽系外で敵のハイペロン爆弾を撃破後、敵の母星に向かってもらう。 全ては、私が力不足によるためだ!! すまぬ。 だが君たちなら、此の困難な航海を無事成し遂げてくれると信じている。 君たちも出撃準備で忙しいだろう…… 之で、私からの話は終わりだ』
 大統領の姿が消えると古代は、命じた。
「之よりヤマトは出撃する総員配置に就け!!」
 艦内にアラームが鳴り響く。
「補助エンジン始動!!」
 徳川は、伝声管で機関室に指示を伝える。
ヤマトの補助エンジンが静かに動き出す。
「フライホイル接続!!」
 補助エンジンが生み出したエネルギーで左右の波動エンジンがうねりをあげ始める。
「スパーチャージャ始動!!」
 ヤマトの各所に命が篭る。
「波動エネルギー、六連波動エンジンに注入開始!!」
 ヤマトのエネルギーを更に巨大にする六連波動エンジンにエネルギーが送り込まれる。
「六連波動エンジン始動1分前!!」
「真田さん、アクエリアス大氷球爆破用意!!」
「爆破、カウントダウン始めます」
 真田は、爆破のタイミングを調整する。
「島!! 爆破と同時に発進だ!!」
「了解!! 電算室、太陽系内航行出力にセーブしてくれ」
 島は、出力を太陽系内航行出力にセーブするよう指示をだす。
電算室から了解との声が返ってきた。
「六連波動エンジン接続、始動!!」
 二基の六連波動エンジンが接続された。
「アクエリアス大氷球爆破!!」
「ヤマト発進!!」
 真田は爆破スイッチを押し、島は操縦桿をひいた。
アクエリアス大氷球に仕掛けられた爆薬がアクエリアス大氷球を砕いた。
 崩れ行くアクエリアス大氷球からヤマトが現れた。

         ◇

「艦長、ヤマトが出撃して行きました」
 [春藍]の副長が報告する。
「よし。 拡散波動砲発射用意!! 目標、アクエリアス大氷球」
「拡散波動砲への回路開きます」
 拡散波動砲へエネルギーを注入する機関長。
「拡散波動砲発射、10秒前!! 総員、対ショック対閃光防御」
 [春藍]の戦闘班長が言う。
カウントダウンを進める戦闘班長。
「拡散波動砲発射!!」
 トリガーをひく戦闘班長。
[春藍]から発射された拡散波動砲は、ヤマトのドックだったアクエリアス大氷球の残骸を飲み込み消滅させた。
「通信士!! ヤマトへ繋いでくれ!!」
「了解!! ヤマトへ繋ぎます」

         ◇

「艦長、[春藍]より通信です」
 相原が報告する。
「繋いでくれ!!」
「了解」
 相原は、そう言って通信を繋いだ。
『私は、[春藍]艦長。 ヤマトがドックとして使っていたアクエリアス大氷球の残骸は、機密消去のため当艦の拡散波動砲で消滅させました』
「私は、宇宙戦艦ヤマト艦長、古代進。 貴艦の行動に感謝する」
『本当は、ヤマトの出撃に同行したいのですが出来ません』
 事情を話す[春藍]艦長。
『ですが、ヤマトの太陽系内での演習の相手ぐらいはできます』
「防衛軍司令部の許可は、とられたのですか?」
『今から、とります』
 そう言って、[春藍]艦長は防衛軍司令部に連絡をする。
数分後、[春藍]艦長が話し始めた。
『防衛軍司令部の許可が取れました。 此れより3日間、ヤマトの演習の相手を務めます』
「お願いします。 演習内容を此れから送ります」
 古代は、相原に演習内容を[春藍]に送らせた。
ヤマトと春藍は、演習宙域へ向かった。

第12章

「各機関、チェック完了!!」
 ヤマトでは、最後のチェックが行われていた。
「各砲塔、旋回良好!!」
 乗組員、総出で行われたチェックは滞りなく終わった。
「ヤマト戦士諸君に告ぐ!! 全乗員に1日の休息を与える。 出撃まで各自、身体を休め英気を養ってほしい。 艦長より以上!!」 
 古代は、艦内放送で言う。
「宮川!! メインクルーと電算室のメンバーを中央作戦室に集めてくれ!!」
「メインクルー及び電算室のメンバーを中央作戦質に集めます」
 そう言って、宮川は主要メンバーを召集する為、放送を流した。

         ◇

 中央作戦室では、二人の人物が作業をしていた。
「戦術の検討は、進んでいるか?」
 古代に声をかけられる二人。
二人は、声の主に敬礼した。
「ガルマン帝国から提供された情報を元にシミュレーションしてみました」
「説明は、待ってくれ!! 主要メンバーが集まってからだ!!」 
 数分後、主要メンバーが集まった。

「皆に紹介しておこう。 中央作戦室の責任者の……」
「土方隆司です」
「山南宗司です」
 自己紹介する二人。
「既に苗字で気づいたかもしれないだろう。 土方隆司は、土方提督の息子だ。 そして山南は、ヤマト艦長を務めた山南艦長の息子だ」
「ヤマトに乗り組み戦術プランを立案しシミュレーションを繰り返し、其れを実戦で生かすのが仕事です」
 自らの仕事を言う土方。
「同じ苗字だから、まさかと思ったが彼の土方提督の息子だったか!!」
 空間騎兵隊の土方が言った。
「はい。 つい先日、士官学校を出てヤマトへ配属されました」
「と言うことは、山南もか……」
「土方は、主席で、自分は、次席で卒業しました」 
「No1とNo2か…… 防衛軍もよく配属したな」
 普段、主席と次席の二名を同じ場所に配属することはない。
今回のように同じ場所に配属されるのは、異例中の異例である。
「はじめてくれ」
 古代は、二人に話を始めるよう言った。
「ガルマン・ガミラスからの情報でバラン星に基地があることは分かっています。 その基地は、軌道上に存在しています」
 土方が言い、山南がパネルに映像投影した。
「映像で分かると思いますが、基地の一部は巨大な戦艦で出来ています」
「其の戦闘力は、ガルマン帝国の機動要塞の戦闘能力を一瞬で半分以下にするほどです」
 之もガルマン帝国から提供された情報だ。
「敵の戦力を削るには、敵の射程外から攻撃するのがベストです。 敵も航空戦力を持っていると推測します」
「其れで、どれくらい持っていると読む?」
「敵艦の内部は分かりませんが、巨大戦艦の数から考えると2000機以上保有していると思われます」
「加藤!! 此の数を相手に出来るか?」
「はっきり言って、厳しいですね。 離脱する機も何機か出るでしょう」
「そうか…… 最初から厳しい戦いになるな」
「おそらく、監視衛星を出して我々が来るのを待っているでしょう。 先制攻撃の準備万端で」
「波動砲を使えばあっという間にけりがつきますが、バラン星に影響与えてしまいます。 更に敵は、波動砲封じの陣形を敷くはずです」
「圧倒的不利な条件の上、戦力を上回る相手を倒す方法も検討しているのだろ!?」 
 古代は、土方に聞いた。
「はい。 考えてあります」
「言ってみろ!!」
「如何考えても正面から戦えば、我々の負けです。 しかし、敵の背後から攻めれば戦力差を埋めることが出来ます」
 敵は巨大な戦艦という点に着目した作戦だった。
「よし。 土方、山南!! 決戦までに其のプランをまとめておいてくれ!! 後、10日ほど時間がある」
「はいっ!!」
「島!! 大マゼラン星雲までの航路は出来たか!?」
「出来ています。 敵との戦闘の作戦によっては、バラン星より先の航路を見直さないといけません」
「そうか…… 航海班のメンバーと土方たちと詰めてくれ!!」
「了解!!」
 作戦会議は、休憩を取りながら丸一日続いた。

 ヤマトの出撃は、翌日だ!!

第11章

『此方、機関室!! エンジンの改装作業終了』
 機関室から作業完了の報告が来た。
「よし。 徳川!! 最終チェックを兼ねて機動手順の確認をしろ!!」
『了解!!』
「後は、波動砲だけか……」
 ヤマトの改装も波動砲を残すだけとなっていた。

「まだ、終わらないのか!!」
「す、すみません。 瞬間物質移送機の本体を何処に組み込むかで悩んでまして……」
「真田さんに聞けばいいだろう?」
「其れが、自分で考えてやれといわれました」
 悩む作業員。
「本当に、方法はないのか?」
「はい。 いろいろ考えましたが、ありません」
「まだ、あるだろう!? 一箇所だけ……」
「あそこに組み込めるわけありません。 どうやってあの装置を組み込めと言うのですか!? 小さくしなければ、とても組み込めるわけ……」
 はっと気づく作業員。
「如何だ!? あっただろう」
 坂東が言う。
「ありました。 形を変え小さくすればいいだけでした」
「ヤマト出撃は、4日後だ。 急げ!!」
「はっ、はいっ!!」
 其の作業員は、何かに取り付かれたように必死で作業に当たる。
今までの遅れを取り戻すかのように……

         ◇

「むかつく!! 何時になったら戦えるんだ!!」
 ホルギリスは、司令長官室で荒れていた。
司令長官室の調度品などが壊れ散らかっていた。
「司令……」
「五月蝿い!! お前も、私を馬鹿にしに来たのか!?」
 如何やら、ホルギリスは馬鹿にされていたようだ。
「出て行け!!」
 兵士達も手を付けられない状況のようだ。

         ◇

「司令!! 本国から届いた資材で要塞の修理、完了しました」
 兵士は、報告した
「作業員に急速を与えよ!!」
「しかし、提督。 本国命令で、要塞の装甲をテクタイト板で覆えとのことです」
「兵士達に休息を与えるのは、先になるな……」
 アールフレッドは、申し訳なさそうに言った。
「兵士達よ、疲労の溜まっているところ申し訳ない。 もう一働きしてもらう。 本国からテクタイト板かが届いた。 其れを要塞の周りに張ってほしい。 無論、交代制でやってもらう。 第二班、第三班には、急速を与える」
 アールフレッドは、第二班と三班に休息を与えた。
「あの攻撃力、新装甲であるテクタイトでも防げるかどうか……」
 ガルマンの要塞は、24時間体制で改装が行われた。
兵士達も鞭打って作業に励んだ。

         ◇

「三千院くん」
 長官が、三千院を呼んだ。
「何でしょうか!? 長官!!」
「ヤマトが出撃した後、アクエリアス大氷球を消す部隊を決めてくれたまえ」
「確かに、あそこは機密の塊ですね」
 長官は、機密情報消去する部隊の選定を三千院に命じた。
「アレだけの質量です。 主力戦艦では、6隻ないと蒸発させられないでしょう」
「と、なると[春藍]になるか……」
「既に[春藍」の艦長に内意を伝えてあります」
「[春藍]にヤマト出撃後、アクエリアス大氷球の残骸を消す任に当たってもらう。 [春藍]艦長に伝えておいてくれ!!」
「了解!! [春藍]艦長に伝えておきます」
 アクエリアス大氷球の機密情報消去の準備は、整った。
ヤマト出撃後、[春藍]の波動砲で蒸発させるだけだ。


 ヤマト出撃まで後3日

第10章

 ヤマトの出撃が決まった翌日……
物資と食料等を積んだ連絡艇がアクエリアス大氷球と地球を往復していた。
「食料は、直ぐに冷蔵庫へ運べ!!」
 生活班は、食料や医薬品を艦内の所定の場所へ運んでいた。
其れも、半端な量ではい。 
「ヤマト農園の生産は如何だ!?」
「計画通りに生産しています」
「よし。 積み込み分と消費量を推測して生産調整しとけ!!」

         ◇

「皇帝陛下!!」
『貴殿の配下、ホルギリスが単独行動で貴重な艦を喪失させたな!?』
「はい。 監督不行き届きで申し訳ありません」
『まぁよい。 貴奴は、我が帝国でも血の気の多さは1、2を争う。 止むえ
んだろう……』
「奴には、罰を与えました」
『与えた罰というのは?』
『司令部の掃除であります』
『ブリュンスタよ』
「はっ!!」
『そなたの基地へ偵察艦隊を預ける。 其れを使って銀河系の情勢を調べるがよい』
「ありがとうございます」
『我が計画は、成功させねば成らぬ。 我らの前に立ちふさがる者は全てなぎ払え』
「畏まりました。 皇帝陛下万歳」

         ◇

「司令!! 皇帝陛下より命令です」
 兵士は報告した。
「読め!!」
「偵察艦隊は、直ちに進軍しマゼラン雲防衛基地へ向かえとのことです」
「よし。 全艦抜錨!! マゼラン雲防衛基地へ進路を取れ」
 大マゼラン星雲の遥かかなたに停泊していた艦隊が一斉に駆動炎をあげ動き出した。 旗艦である巨大空母と高速艦で構成された偵察艦隊だ。
「私は、あの馬鹿とは違う。 必ずや皇帝陛下の期待に添えて見せる」

         ◇

「良いか!? ヤマトの艦載機の歴史は分かったな」
 加藤は、戦闘機隊の隊員に講義をしていた。
「ヤマトには二種類の戦闘機が搭載されている。 一つは、通常のタイプ。 もう一つは雷撃タイプだ!! 通常タイプの主任務は、ヤマトへ近づく敵機を撃ち落すことだ」
「隊長、聞いた話ではバージョンUPしたとか……」 
「丁度、話に出たことだし説明する」
 新戦闘機について話す加藤。
「ヤマトに積み込まれる戦闘機は、言うまでもない。 最新型だ!!」
「最新型と言うと、コスモタイガーⅣですか?」
「あぁ。 コスモタイガーⅢを5年の歳月をかけて改良し誕生したコスモタイガーⅣだ!! コスモタイガーⅣは、従来の戦闘機とは違う。 小さいながらも波動エンジンが搭載されている」
 今度のコスモタイガーには波動エンジンが搭載されているようだ。
「武装も強力なものに変更されている。 其の最たるものがミサイルだ!! 特に、波動カートリッジミサイルは気をつけろ!! ヤマトの波動砲の1兆分の1といっても、敵艦を一隻沈める威力があることを肝に銘じておけ!!」
「はいっ」
 隊員達は、返事をした。

         ◇

「真田さん、全ての作業が終わり次第、アクエリアス大氷球に爆薬をセットしてください」
「分かった。 作業が終わり次第、爆薬をセットしておく」
 そう言って、爆薬の手配をする真田。
ヤマトを改装する、此の秘密ドックに最後の日が近づいていた。


 ヤマト出撃まで、後5日

第9章

「司令、要塞の火災、鎮火しました」
 兵士が、報告する。
消火開始から数時間後のことだ。
「提督、死傷者の収容終わりました」
「我が兵士の死傷者数は?」
「はい。 重軽傷者数200人、死者数50人です」
「思ったより多いな……」
「提督、本星より連絡!!」
「読め!!」
「輸送船団は、ガルマン時間12時に本星を出発。 到着は、5日後の15時
の予定との事です」
「宙域の監視を怠るな!!」

         ◇

「くそうっ」
「し、司令」
 ホルギリスは、脱出艇で命からがら基地へ帰ってきていた。
「司令!!」
「何だ!!」
 ホルギリスは、怒鳴り返す。
「ブリュンスタ大提督から通信です」
「出せ!!」
 スクリーンに現れるブリュンスタ大提督。
『ホルギリス!! ガルマンを挑発するといいながら返り討ちにあったようだな』
「くっ……」
『だから、単独行動は待てと言ったのだ!! 皇帝陛下に何ってお詫びをすればすむのか!!』
 ブリュンスタは、ホルギリスが身勝手な行動をした挙句、艦を失ったことを怒った。
『補充戦力は、送らん!! 現戦力で防衛せよ!! 其れから、罰として司令部の
掃除を命じる』
 ブリュンスタは、罰を言い渡した。
「はい」
 元気なく返事をするホルギリス。

         ◇

「三千院くん、春藍以下の艦隊の整備は如何かね?」
 長官が聞く。
「現在、機関をはじめとする改装計画の立案中です。 最終的には、機関の出力UPと波動砲と主砲の射程延長にとどまるはずです」
 改装の見込みを言う三千院。
「そうか。 改装にどのくらい掛かるか!?」
「防衛軍の全ての艦艇の改装が終わるのに二ヶ月ほど掛かります」
 防衛軍の艦艇は、1000隻近くある。
其の全てを整備するだけでも可也の時間を要する。
「短縮は出来ないのかね?」
「手抜きをして多くの将兵を失うわけにも行きません」
 嘗て地球は多くの将兵を失った事がある。
彼の白色彗星帝国戦役だ。
「しかし、地球には時間がない。 後、20日余りでハイペロン爆弾が落ちてくる」
「ハイペロン爆弾を地球に落ちる前に撃破するのは、強化した波動砲しかないでしょう」
 ハイペロン爆弾を撃破出来るのは波動砲しかないと言う三千院。
「波動砲か…… ヤマトも改装中だ」
「ヤハリ、戦力温存を考えるならヤマトに撃破させるしかありません」
「大改装でパワーUPしたヤマトの波動砲がどのくらいの威力があるか想像も出来ん」
「では、ヤマトに太陽系外で撃破させましょう。 太陽系外なら波動砲に桁違いの威力があっても心配要りません」
「よし。 直ちにヤマトの出撃日を決めよ!!」
 長官は、ヤマトの出撃日を決めるよう命じた。
「はい。 各種演習も計算に入れて、10日後の10月6日がいいでしょう」
「直ちにヤマトへ伝えよ!!」
「直ちに伝えます」

         ◇

「艦長、防衛軍司令部から通信です」
 通信班長の相原が言う。
「繋いでくれ!!」
「了解。 メインに出します」
 メインパネルに艦隊運営長官の三千院疾風が現れた。
古代は、敬礼をする。
『地球防衛軍司令長官の命令を伝える。 ヤマトには、10月9日の0930に出撃してもらうことになった。 ヤマトは、太陽系外で敵のハイペロン爆弾を波動砲で撃破後、敵の本星へ向かってほしい』
「分かりました。 春藍以下の主力艦隊は?」
『動かせん!! 本当は、ヤマトへ同行させてやりたいんだが、敵の襲来に備えて待機させておかなければならない。 そう言うことだから出撃準備を急いでくれ』
「改装作業を急がせます」
『有無。 今回も司令部の力不足でヤマトへ重荷を背負わすことになってすまん』
「では、いろいろ準備ありますので……」
 古代は、敬礼をした。
それに対して三千院は、答礼をしスクリーンから消えた。

「相原、艦内放送をしてくれ!!」
「了解」
 淡々と作業をする相原。
「此方、艦長。 ヤマトの乗員各員に伝える。 我が宇宙戦艦ヤマトは、10月9日0930に出撃する。 もう一度、繰り返す。 本艦は、10月9日0930に出撃する。 
各人其のつもりで準備に当たってくれ!! 其れから、幹部の者は直ぐに中央作戦室に集まってくれ!!」
 古代は、乗員全員に放送を流した。


 ヤマトは、出撃に向かって動き始めた。 数年の眠りから覚めるときが近づいてきた。
ヤマトの出撃日は、奇しくも大マゼラン星雲へ旅立った日と同じ10月9日。

 ヤマトの出撃まで後10日