第8章

 銀河系東部方面軍…… 其の司令部は、巨大な要塞の中にある。
かつての東部方面軍の機動要塞を強化、巨大化させたのが此の要塞である。
「アールフレッド提督、周囲に異常はありません」
「有無。 警戒を怠るな!!」
「はい」
 此の方面軍も漏れず警戒強化の命が来ている。
其の時、突如要塞の警報が鳴り響いた。
「提督!! 要塞のセンサー群が空間湾曲波を探知しました」
 兵士が報告する。
「所属は、何処だ!?」
「データーベースにありません」
「ち、侵略者共が……」
 要塞は、現れた敵に混乱した。

         ◇

「艦隊前方に未確認要塞発見!!」
「全艦、砲撃開始!! 私を楽しませてくれよ」
 全てが巨大なガルバート帝国の戦艦が一斉に火を噴く。
目標は、ガルマン帝国の要塞だ。

         ◇

「敵が、攻撃をしてきています」
「此の要塞は、最新の技術を投入して創られた新型だ!! 一寸やそこ等の攻撃では、落ちん」
 自信を持って言うアールフレッド。
しかし、敵の砲撃は強力で要塞が揺れる。
「提督、第一装甲にヒビが入ってきています」
「空間磁力鍍金展開!!」
 堪らず空間磁力鍍金の展開を命じた。
「其れから、要塞各所から擬似煙を出せ!! 敵を罠にはめる」

         ◇

「敵、沈黙したまま反撃来ません」
「敵要塞各所から煙が出ています。 我々の攻撃で致命的なダメージを与えた模様」
「ふんっ。 つまらない」
「司令、ご命令を……」
「此のまま、アレを残すのは厄介だ。 とどめは、私自らさす。 ガルバート砲用意」

 ホルギリスは、ガルバート砲の用意を命じた。
「ガルバート砲エネルギー充填に入ります」
 旗艦の艦首にエネルギーが集まっていく。
「ガルバート砲、エネルギー充填完了!!」
 ホルギリスは、トリガーに手をかける。
「死ね!! ガルバート砲発射!!」
 旗艦の艦首から緑色のエネルギーが発射された。

         ◇

「敵旗艦に発射反応!! 長強力エネルギー来ます」
 兵士が叫ぶ。
「総員、ショックに備えよ」
 次の瞬間、激しい衝撃が要塞を襲った。
激しい衝撃が収まると各所から損害の報告が絶え間なく来た。
「左舷発着ポート大破!! ブロックを封鎖の上、放棄します」
「右舷ミサイル発射管波損」
 そんな中、アールフレッドは、命じる。
「ネオ・デスラー砲用意!!」
「しかし、要塞の損傷状態で撃てば、被害が……」
「分かっている。 総統の庭を踏み荒らす奴を見逃せるか!!」

         ◇

「司令、要塞にダメージを与えました」
「なかなか、しぶといな…… 第二射用意!!」
「ガルバート砲第二射エネルギー充填120%」
「司令、敵に高エネルギー反応!!」
「構うものか!! 第二射発射と同時に反転撤退する。 各艦に伝えろ!!」
「はいっ」
「之でくたばれ!!」
 ホルギリスは、トリガーを引いた。

         ◇

「敵より再び高エネルギー反応接近!! 直撃します」
 再び要塞を激しい衝撃を襲った。
さっきので、防御力が低下していたため各所で爆発が起こった。
「格納庫で爆発!! スプリンクラー作動しません!!」
「直ちに消火急げ!!」
「要塞の機能40%まで低下!!」
「ネオ・デスラー砲は発射可能か?」
「大丈夫です。 発射制御室は、無事です」
「よし。 発射口オープン。 ネオ・デスラー砲発射10秒前」
 カウントダウンが始まる。
「3、2、1。 ネオ・デスラー砲発射!!」
 アールフレッドは、デスラー砲のトリガを引いた。
要塞から発射された、ネオ・デスラー砲はガルバート艦隊へ襲い掛かった。

         ◇

「司令、敵要塞から超高エネルギー接近してきます」
「何!? ワープだ!! 急げ!!」
「だめです。 全艦のワープ間に合いません」
「無差別ワープだ急げ!!」
 彼らを要塞から発射されたネオ・デスラー砲が飲み込んだ。

         ◇

「敵部隊は?」
「旗艦と思われる艦がネオ・デスラー砲が直撃する瞬間にワープで逃げた形跡があります」
「総員、戦闘配備解除!! 各部、復旧に全力を尽くせ!! 救護兵、負傷者の治療及び死者の会衆を急げ!!」
 アールフレッドは、各所へ指示を飛ばす。
『提督、資材保管庫がやられています』
「何!? 使えるものは?」
『全て使い物になりません。 本国から資材を持ってきてもらわないと……』
「今は、消火を急げ!! 機密漏れの区画は、修理が終わるまで閉鎖だ!!」
『はいっ』

         ◇

「何だ!! アレは?」
 ブブゥー。
艦内にけたたましく警報が鳴り響く。
「司令!! 危険です。 艦内に有毒ガスが漏れています」
「何とかしろ!!」
「何とかしろといわれましても…… さっきのワープで艦の機器がいかれました」
 更に悪い事態が彼らを襲った。
「大変です。 艦内から空気が漏れています」
【危険!! 危険!! 総員脱出せよ!!】
 艦の危険を伝えるメッセージが流れる。
「脱出艇で脱出だ!!」
 ホルギリスは、司令部員を連れ脱出艇で脱出した。
脱出艇で艦を離れた直後、艦は大爆発を起こした。

         ◇

「何!! 東部方面軍が襲われただと!!」
「はい。 敵を退けたものの損傷著しいとのことです」
「取りあえずは、敵を退けたのだな。 何故、修理しないのだ」
「其れが、資材保管区画付近に被弾し使い物にならないとのことです」
「直ぐに補給艦隊を派遣しろ!!」
「はっ」
 デスラーは、東部方面軍へ物資の輸送を命じた。


 辛くも勝利を収めたガルマン帝国。 
ガルバート帝国の魔の手は銀河系へ伸びるのも時間の問題だ。

第7章

「諸君、今、我らが銀河系に最大の危機が訪れようとしている」
 デスラーが銀河連邦の議会堂の壇上で言う。
「敵の名は?」
「我々を如何しようというのだ!!」
 情報の少ない加盟国は不安を露にする。
「我らが、銀河を狙うものの名は[ガルバート帝国]……」
 デスラーから明かされる敵政体の名。
「一部の者は、知っていると思う。 敵は、我らに星を明け渡せよ言ってきた」
「本当に明け渡すのか!!」
「私は、あんな奴らに明け渡す気はない。 我らに喧嘩を売ったことを後悔さてやる」

 デスラーの交戦宣言に拍手を送る加盟国の大使たち。
「敵との先頭に際して銀河連邦軍を編成する」
「現有戦力で艦隊を編成しても勝てるのですか?」
「それに対して、保有戦力制限を一時解除する。 各国、戦力を増強しガルマン・ガミラスへ集合せよ!!」
 デスラーの宣言を持って閉会となった。
戦力制限の一時解除を持って各国で軍艦の建造が急ピッチで開始されることになった。


         ◇

「総統、我が軍の再教育をしましょうか!?」
 ガルマン・ガミラス帝国艦隊総司令のドメラーが聞いた。
「それには及ばんよ、ドメラー!!」
「総統、艦隊総旗艦の[グレート・ネオデスラー・ガミラシア]の改装を開始しました」

「ウラウルフ!!」
「はいっ!!」
「新兵器の開発し搭載は出来るか!?」
「物にもよりますが…… 具体的に如何言う物ですか?」
「例えば、デスラー砲をもっと強化することは出来るか!?」
「デスラー砲ですか!? 総統、デスラー砲をもっと強化するのですか?」
「そうだ!! 主砲の射程も更に延ばす」
 デスラーは、更に自らの母艦を強化するようだ。
「射程を延ばすには、電磁投射システムを主砲に組まないといけません」
 電磁投射システム。 其れは、ガルマンが開発した射撃システムだ。
普通の砲撃を加速し打ち出すのだ。 まだ、試験段階の技術なのだ。其れを実戦投入をデスラーは決めた。
「ガルマン最高の技術者であるお前ならやってくれると期待している」
「はっ!! 早速作業に入ります」
「ウラウルフ、ガルマン・ヤマトの改造は進んでいるか!?」
「改造ということは、拡大化改装の事ですか」
「そうだ」
「総統、ガルマン・ヤマトの改装は、難航しております」
「難航だと!!」
「はい。 先の大戦時に急造したため各所に問題が見つかっています」
「問題だと。 何故、放置していた」
「放置していたわけではありません。 当時の戦力増強要因の一つです。其のため質の落ちた鉄板が使用されたためです」
「戦力の増強に重点を置いていたから気づかなかったというわけか……」
「申し訳ありません」
「丁度いい機会だ!! 徹底的に強化せよ」
 デスラーは、ガルマン・ヤマトの強化を命じた。

         ◇

「退屈だ!!」
 ホルギリスは、退屈に押しつぶされていた。
「おいっ!!」
「はっ、はいっ!!」 
「ブリュンスタ大提督からの命令はないのか!?」
「ありません」
「退屈すぎでまがもたん!! ガルマンを挑発しに行く」
「司令!!」
 出て行こうとするホルギリスを呼び止める兵士。
「五月蝿い!!」
 ホルギリスは、自らの乗艦に向かった。

         ◇

「此れからガルマンをからかいに行く!! 第一分艦隊のみ抜錨!!」
 ホルギリスは、命じた。
「ガルマンめ、私が退屈をしないよう楽しませてくれよ……」
 バラン防衛艦隊の第一分艦隊が基地から離れていった。

         ◇

「ホルギリスが退屈に押しつぶされて勝手な行動に出ていなければいいが……」
 ホルギリスの勝手な行動を心配するブリュンスタ大提督。
「良し。 バラン防衛基地へ通信を送れ!!」
「了解!!」
 回路を繋ぐ兵士。
『此方、バラン防衛基地!!』
「おいっ。 ホルギリスは、居るか!?」
 ホルギリスの所在を聞くブリュンスタ。
『先ほど、退屈に耐えかねて出て行かれました』
「行き先は、聞いていないか?」
『確か、ガルマンをからかうと言っていました』
「あの馬鹿!!」
『ひぃ!!』
「お前に行ったのではない。 基地に居ないホルギリスにだ!!」
 ブリュンスタは、起こっていた。
「前部隊が皇帝陛下の指示通りに動いているというのに……」
「懲罰部隊を出しますか?」
「いや、泳がせておく。 ガルマンについても詳しい情報を持っているわけではない。 少しは、情報を持ち帰ってくれないとこまる」
 副官は、ブリュンスタと話す。
「バランの通信兵!!」
『はっ!!』
「ホルギリスに伝えておけ!! 次に身勝手な行動をしたら司令官の任を解くとな」
『わかりました。 伝えておきます』
 返事を聞いて通信をきった。

「後任の候補の選定をしておけ!!」
「はい。 選定作業に入ります」

         ◇

「司令、間もなく銀河系外縁部はいります」
 ホルギリスは、勝手に艦を動かし銀河系へ入ろうとしていた。
「良し。 銀河系中心部方向へワープだ!!」
 次々、艦がワープで消えていく。 だが、彼らはミスを犯していた。
彼らの艦は巨大なのだ。 それだけ敵に気づかれやすいと言うことに……

第6章

 ヤマト秘密ドックであるアクエリアス大氷球につた彼らはヤマトを見て驚いた。
「之が、ヤマト……」
「話で聞いていたものと形や大きさが違うぞ!!」
「おいっ!! 所属を言え!!」
 ドックの警備兵が言う。
「空間騎兵隊特殊戦闘部隊。 地球連邦大統領の命でヤマトへ乗り組むことになった」

「し、失礼しました」
「ヤマトの艦長へ取り次いでくれ」
「ヤマト艦長のところへ案内しろ!!」
 一人の警備兵がもう一人の警備兵に言った。

         ◇

「艦長、改装は予定通り進んでいます」
 真田が途中経過を報告する。
其の時、警備兵が入ってきた。
「空間騎兵隊特殊戦闘部隊の隊長をお連れしました」
 警備兵に伴われて隊長が入ってくる。
「あんたが、艦長か!?」
「君は誰だ!!」
「俺は、空間騎兵隊特殊戦闘部隊隊長、土方鴨だ!!」
「君たちの乗艦の報告は聞いていない」
「俺たちが乗り組むのは、長官を通じての大統領命令でな……」
 理由を言う、土方。
「そういう訳だから乗り込ませてもらうぜ!!」
「とりあえず、出撃まで新人達に格闘技の講義でもしておいて貰おう」

         ◇

「全艦抜錨!!」
 グランフィッシュは、命じた。
ガルバート帝国の本星から巨大な戦艦群が次々発進して行った。
「司令。 最初の合流予定地点まで5万光年です」
「よし。 当直以外の者に6時間の休憩時間を与える!!」
 グランフィッシュは、乗員に休憩時間を与えた。

         ◇

「陛下、グランフィッシュが出撃していきました」
 グリジアーノが言う。
「そうか。 では、我が本隊の準備にかかるがよい」
「はっ!! 皇帝陛下、本隊といっても数十万隻もあります」
「ならば、直ぐに作業に入ればよかろう」
「皇帝陛下もご存知と思いますが、我が帝国の艦は全てが桁違いの大きさです。ドックへ入れようにも入れるスペースがありません」
「なら、軌道上で整備を行え!!」
「しかし、軌道上には移民船が停泊しています。 更に、連絡線が多数行き来しておりスペースの確保が出来ません」
 移民宇宙船は、本星の二倍以上の大きさがある。
星系内の居住惑星からの帝国民の収容するから可也の人数だ。
「更に第一ドックは、皇帝御座艦の建造で使えません」
 第一ドックは、帝国最大のドックで同時に複数の艦を整備できる広さがある。
今は、其の全てを皇帝御座艦の建造の為に使っている。
「銀河系までは、時間がタップリある。今は、機関と装甲の整備点検だけで良い」
「では、直ぐに各艦に伝えます」
 グリジアーノは、皇帝の部屋を出て行った。

         ◇

「うぎゃあああっ!!」
「ぐぅえあ!!」
「そんなんじゃ、命が幾らあっても足りんぞ!!」
 新人達は、空間騎兵隊に扱かれていた。
「其れでも超エリートか? 今すぐ、ヤマトから降りろ!!」
「くそっ」
 危険を感じて回避する土方。
「いい腕をしている奴がいるじゃねぇか!! 貴様、名は!?」
 土方が、名を聞いてきた。
「戦術指揮補佐、朽木葵!!」
「朽木か、いい名だな。 出撃まで今より数段上の戦闘技術を叩き込んでやる。其処の屑共と違って見込みがある」
「ありがとうございます。 艦長にもそういわれました」

         ◇

「作業は、如何だ!?」
 真田が作業員に聞く。
「次元潜行制御パネルの設置は、完了しました」
「良し。 回路チェックは?」
「いえ、まだです。 エンジンを動かしてみない事には回路のチェックは出来ません」

「ガルマン・ガミラスの高度な技術だ。テストなしで動くだろう……」
「本当に大丈夫なのですか?」
「今まで、テストもなしに実用化したものがたくさんある」
 それだけ、ガルマン・ガミラスの技術を信頼しているのだ。

 そして、波動砲の改装は、大詰めを迎えようとしていた。
「瞬間物質移送機は、ストライカーボルトに組み込むしかないな……」
 技術者が検討を繰り返していた。
「作業は、如何だ!?」
「あっ、真田技師長。 瞬間物質移送機の設置場所を決めかねています」
「決めかねている? 何処へ積むつもりなのか?」
「検討の結果、ストライカーボルトの中がいいかと……」
「良し、早速作業に当たれ!!」
 波動砲制御室でストライカーボルトが抜かれ瞬間物質移送機を組み込む作業が開始された。
「終わったら作動チェックを忘れるなよ」
 改装と平行して出撃準備行われている。
ヤマト出撃の日は近づいている。

第5章

「技師長、次元潜行用のエンジンは何処へ設置しますか?」
 作業員が真田に聞いた。
「せっかく調整したエンジンに組み込む時間はあるが再調整をし直さないといかん。どっちにしろ波動砲の調整もあるからエンジンに組み込め!!」
 真田に指示されて作業を行う作業員。
作業員は制御パネルを開け、次元潜行用の制御部品を組み込む為、回路を弄くる。
「制御パネルに差し込むだけで良いんだぞ!!」
 既に、制御パネルには次元潜行用の制御パネル設置用のスペースが設けられていた。

「技師長、之だけのスペースに回路を組み込むのですか?」
 ヤマトの機関室は、かなり広い。
其のスペースに制御パネルを設置するだけでも大変なのだ。

 また、波動砲の制御室でも改装が行われていた。
瞬間物質移送機を波動砲に組み込む作業だ。
「折角、改装が終わったと思ったら、また改装かよ」
 不満を言う作業員。
「仕方ないだろう。 防衛軍本部の命令では……」
 ヤマトの緊急改装の命令は、防衛軍司令部から出されたものだった。
既にヤマトは、之までの改装で船体は二倍以上に大きくなっている。
「しかし、組み込むのも骨が折れそうだ」
「あぁ。 出撃まで時間がないと言うのに……」

         ◇

「皇帝陛下、編成した主力艦隊の指揮は誰に執らせましょうか?」
 グリジアーノが聞く。
「グランフィッシュに執らせよ!!」
「では、グランフィッシュに出撃を命じます」
 グランフィッシュは、数人居る副司令長官の一人だ。
普段は、指揮する艦隊を持たないが、こうして有事の際には、皇帝の命で司令長官に指名されるのだ。

「グランフィッシュ!!」
「お呼びですか!? 総司令長官」
「君に皇帝陛下から命令が下った。 新編成された主力艦隊を率いて銀河系へ侵攻してくれ」
「私よりも優秀な副司令長官が何人も居るでしょう!?」
「其れは、知っている。 皇帝陛下の御そばに優秀な司令が必要なのだ」
 苦渋の選択を説明するグリジアーノ。
「分かりました。 其の任、引き受けましょう」
「君に預ける戦力は、帝国の全戦力の3割だ!!」
「皇帝親衛艦隊や殲滅艦隊とほぼ同じ戦力ではありませんか」
 ガルバート帝国の艦は巨大な戦艦が主力である。あまりの巨艦故、運用コストがすごく掛かるのだ。
「グランフィッシュ、明日出撃いたします」
「途中で各戦線から引き抜いた戦隊が加わる。 合流しつつ進軍せよ」
「ガルバート帝国に栄光を!!」
 グランフィッシュは、ガルバート帝国式の敬礼をして出撃準備に向かった。

         ◇

「藤堂長官!! 話は、聞いたよ」
「大統領のお耳にも入っておいででしたか!?」
「有無。 此度の件、地球だけの問題では終わらん」
 長官は、大統領と話している。
「ガルマン・ガミラスのデスラー総統と話したのかね」
「既に話をしある技術の提供を受けヤマトの改装を急いでいます」
「彼らには、過酷な運命を背負わすことになるな……」
「過酷な運命とは、何ですか?」
「強大な軍事力を持つ帝国とたった一隻で戦わすという運命を」
「ヤハリ、大統領は、未来を……」
 現大統領は未来視の力を持っているようだ。
「其の未来は、如何いうものなのですか?」
「多くの血が流れ屍の山が出来る。 多くの犠牲を出して戦いは終わる」
 大統領の未来視で敵味方に多くの犠牲者が出るという。
勝者は、ないと言うらしい。
「そうなると、春藍を旗艦とする主力艦隊を同行させるわけにはいきませんね」
「前線に行くのは、ヤマトだけだ!!」
「しかし、大統領。 ヤマトは、再建時より巨大化しています」
「長官、ヤマトへ空間騎兵隊特殊戦闘部隊を乗り込ませたまえ」
「大統領、地球最強の空間騎兵隊を乗り込ませるのですか!?」
「そうだ、之は大統領命令だ」
「彼らに居場所があるでしょうか?」
「彼らなら期待以上の働きをする」
 断言する大統領。
「彼らを乗せるということは、食料の追加積み込みをしないといけません」
「長官、直ちに命令を伝えよ!!」
「はい。 大統領」

         ◇

「隊長!! 我が部隊に命令です」
「誰からの命令だ!?」
「防衛軍司令長官からです」
「芹沢、命令内容は何だ!?」 
「其れが、ヤマトへ乗り組めっと」
「ヤマトに乗り込めだぁ? 何で誇り高き空間騎兵隊の俺たちが乗らんやならんのんだぁ!?」
「偉大な斉藤始隊長と同じヤマトへ乗り込める機会は滅多にありませんよ」
「そうだな、こんな機会にどとないかもしれん」
 隊長は、命じる。
「全員、フル装備の集合!! 集合の後、英雄の丘へ行く。芹沢、酒を用意しろ!!」
 全員、ヤマトへ乗り込む為、装備一式を持って英雄の丘へ向かった。


 空間騎兵隊特殊戦闘部隊は、斉藤始の碑の前に整列した。
隊員たちが、順番に酒をかけていった。
「総員、偉大な空間騎兵隊斉藤始隊長の霊へ敬礼!!」
 隊員たちが敬礼をする。
「敬礼やめ!! 此処に眠る同胞達とささやかな宴会をした後、秘密基地へ行く」
 隊員達は、ささやかな宴会の後、アクエリアス大氷球へ向かった。
ヤマトへ乗り組む為に……


第4章

 アクエリアス大氷球で、ヤマトの再改装が急がれていた。
「真田さん、デスラーが送ってきた技術の装備にどのくらい掛かりますか?」
 古代は、真田に聞いた。
「あっ、艦長!! 今、坂東たちにデスラー総統が送ってきた設計図を元にヤマトに合った改造をさせている最中だ」
「敵のパイペロン爆弾が落ちるまでに完了できますか?」
「新たな装備を加えるとまた、機関出力など調整しなおさんといかん!!」
 調整が必要と言う真田。

「艦長は、誰だ!?」
 空間騎兵隊の服を着た男が聞いた。
「私が、宇宙戦艦ヤマトの艦長、古代進だ!!」
 古代が名乗り出る。
「そういうお前は、誰だ!? 乗艦名簿にも載っていない顔だ」
「俺は、長官命令でヤマトに乗り組むことになった空間騎兵隊の綾崎貞治だ!!俺以外に、副隊長の愛沢七希以下30人に乗艦許可をくれ!!」
 そう言って、綾崎は命令書を見せる。
「確かに長官のサインだ。 綾崎、ヤマトへ乗艦を許可する」
「彗星帝国戦の時みたいに問題を起こさなければいいのだが……」
 真田は、過去のことを思い出した。

         ◇

「之が、バラン星? 俺は、こんな星を警備させられるのか!?」
 気乗りしないホルギリス。
「司令、そう仰られずに周囲の空間を確保する命令を……」
 副官が命令を促す。
「第10~第20戦隊は、周囲の空間を確保しろ!!」
 ホルギリスは、退屈そうに命じた。
命令を受けた戦隊が、艦隊から別れ其々の担当宙域へ散っていった。
「司令、ブリュンスタ大提督の命令を受けた時の元気は何処へ言ったのですか?」
「今まで、戦った奴らは手ごたえがない。 戦う気も起こらん!!」
 戦う気がしないと言うホルギリス。
一方で、バラン要塞基地化作業は順調に進んでいた。

         ◇

「今頃、退屈に殺されているだろうな……」
「あ奴は、我が帝国の前戦部隊でも指折りの戦闘狂」
「奴は、戦闘狂故、退屈に殺されるだろう」
 ブリュンスタとアムールステルは、酒を飲みながら語る。
「大提督は、其れを待っておられるのですか?」
「何れ、奴には存分に働いてもらうことになる。 地球もあのまま黙っていまい」
「其れに他の銀河系の連中も……」
「移民のため此の宇宙まで来たかいがあったかもしれん」
「如何いう事ですか?」
「我らが宇宙の周辺に骨のある奴らが居ないと言うことだ!! 如何やら、此の宇宙の連中は、多少骨があるようだからな」
 如何、料理しようか考えるブリュンスタ。

         ◇

「皇帝陛下、移民宇宙船[ビッグ・プラント]へ帝国の臣民の移乗開始しました」
 帝国支配庁長官、ストラウスが報告する。
「ストラウス、後どのくらい掛かるか!?」
「全ての臣民が乗り込みを完了するまで1200ガルバート時間ほど掛かります」
「そうか、全ての輸送艇を導入して移乗を急がせよ!!」
「はっ!!」
「我が宇宙は、後どのくらい持つか!?」
「長くて1000年、短くて後数年というところかと……」
「思ったほど、残されておらんようじゃの」
「はい。 移動速度が遅い移民船だと星系外に無事出れるかギリギリです」
 ガルバート帝国がある星系は、物凄く巨大な太陽系なのである。其のため船足の遅い移民船が星系の外に出るのに途轍もない時間が掛かるのだ。
「移民船は、多くの臣民を乗せる為、殆どを居住区画が占めています」
「其れは、知っておる」
「移民船の速度を上げるため軍艦を推進機関として利用するためには装甲を強化する必要があります緊急時にワープすることになった場合、スピードに絶えられずに宇宙船がバラバラになってしまいます」
「ならば、門を使えば良いであろう」
「確かに、ソードを使えばバラバラになる心配はありませんが平面宇宙で大量のエネルギーを消費してしまいます。途中で幾度も補給をせねばなりません」
「どちらにせよ、莫大な予算をつぎ込んだ事業だ!! 必ず成功させねばならぬ。
私の両肩には全ての臣民の期待が圧し掛かっておるのだからな」
 彼の肩には、重圧が圧し掛かっていた。 しかし彼は、其れを感じさせない器量があった。
「必要とあらば、資金を更につぎ込んでも構わん!!」
「かしこまりました」
 ストラウスは、皇帝の執務室を出て作業に入った。
「我らが先祖達よ!! 此度の移民計画を成功させたまえ」
 ラムラージュは、空を見ながら祈った。そして、彼は信じられないものが見えた。
「我が帝国の艦隊がたった一隻の戦艦に敗れるのか!?」
 彼は、未来が見えるのだ。其の未来視で帝国を此処まで強大な国にしたのだ。
「グリジアーノ!!」
「お呼びでしょうか!? 陛下」
「帝国本星及び各根拠地に留めてある分艦隊を編成し銀河系方面へ進軍させよ!!」
「それでは、本星の防衛は如何されるのですか?」
 グリジアーノが皇帝に聞いた。
「其れならば、アテダンダース大提督に執らせるがよい」
「彼ならば、本星を防衛し敵戦艦を撃沈してくれるでしょう」
「ならば、直ぐに呼び戻すがよい!!」
「では、直ぐに呼び戻す命令を連絡艦隊に命じましょう」
 グリジアーノは、命令を出すため皇帝執務室を出ていった。
「此の帝国を私の代で途絶やすわけにはいかんからな……」
 彼は、民族存亡という重責を背負っている。
「噂で聞いたが銀河の大国、ガルマン・ガミラスのデスラー総統は同一民族の星を見つけたという。ならば、我が同一民族も何処かに居るのかもしれん」

         ◇

 ガルバート帝国が発射したハイペロン爆弾が地球へ落ちるまで後25日。