第9章

「司令、要塞の火災、鎮火しました」
 兵士が、報告する。
消火開始から数時間後のことだ。
「提督、死傷者の収容終わりました」
「我が兵士の死傷者数は?」
「はい。 重軽傷者数200人、死者数50人です」
「思ったより多いな……」
「提督、本星より連絡!!」
「読め!!」
「輸送船団は、ガルマン時間12時に本星を出発。 到着は、5日後の15時
の予定との事です」
「宙域の監視を怠るな!!」

         ◇

「くそうっ」
「し、司令」
 ホルギリスは、脱出艇で命からがら基地へ帰ってきていた。
「司令!!」
「何だ!!」
 ホルギリスは、怒鳴り返す。
「ブリュンスタ大提督から通信です」
「出せ!!」
 スクリーンに現れるブリュンスタ大提督。
『ホルギリス!! ガルマンを挑発するといいながら返り討ちにあったようだな』
「くっ……」
『だから、単独行動は待てと言ったのだ!! 皇帝陛下に何ってお詫びをすればすむのか!!』
 ブリュンスタは、ホルギリスが身勝手な行動をした挙句、艦を失ったことを怒った。
『補充戦力は、送らん!! 現戦力で防衛せよ!! 其れから、罰として司令部の
掃除を命じる』
 ブリュンスタは、罰を言い渡した。
「はい」
 元気なく返事をするホルギリス。

         ◇

「三千院くん、春藍以下の艦隊の整備は如何かね?」
 長官が聞く。
「現在、機関をはじめとする改装計画の立案中です。 最終的には、機関の出力UPと波動砲と主砲の射程延長にとどまるはずです」
 改装の見込みを言う三千院。
「そうか。 改装にどのくらい掛かるか!?」
「防衛軍の全ての艦艇の改装が終わるのに二ヶ月ほど掛かります」
 防衛軍の艦艇は、1000隻近くある。
其の全てを整備するだけでも可也の時間を要する。
「短縮は出来ないのかね?」
「手抜きをして多くの将兵を失うわけにも行きません」
 嘗て地球は多くの将兵を失った事がある。
彼の白色彗星帝国戦役だ。
「しかし、地球には時間がない。 後、20日余りでハイペロン爆弾が落ちてくる」
「ハイペロン爆弾を地球に落ちる前に撃破するのは、強化した波動砲しかないでしょう」
 ハイペロン爆弾を撃破出来るのは波動砲しかないと言う三千院。
「波動砲か…… ヤマトも改装中だ」
「ヤハリ、戦力温存を考えるならヤマトに撃破させるしかありません」
「大改装でパワーUPしたヤマトの波動砲がどのくらいの威力があるか想像も出来ん」
「では、ヤマトに太陽系外で撃破させましょう。 太陽系外なら波動砲に桁違いの威力があっても心配要りません」
「よし。 直ちにヤマトの出撃日を決めよ!!」
 長官は、ヤマトの出撃日を決めるよう命じた。
「はい。 各種演習も計算に入れて、10日後の10月6日がいいでしょう」
「直ちにヤマトへ伝えよ!!」
「直ちに伝えます」

         ◇

「艦長、防衛軍司令部から通信です」
 通信班長の相原が言う。
「繋いでくれ!!」
「了解。 メインに出します」
 メインパネルに艦隊運営長官の三千院疾風が現れた。
古代は、敬礼をする。
『地球防衛軍司令長官の命令を伝える。 ヤマトには、10月9日の0930に出撃してもらうことになった。 ヤマトは、太陽系外で敵のハイペロン爆弾を波動砲で撃破後、敵の本星へ向かってほしい』
「分かりました。 春藍以下の主力艦隊は?」
『動かせん!! 本当は、ヤマトへ同行させてやりたいんだが、敵の襲来に備えて待機させておかなければならない。 そう言うことだから出撃準備を急いでくれ』
「改装作業を急がせます」
『有無。 今回も司令部の力不足でヤマトへ重荷を背負わすことになってすまん』
「では、いろいろ準備ありますので……」
 古代は、敬礼をした。
それに対して三千院は、答礼をしスクリーンから消えた。

「相原、艦内放送をしてくれ!!」
「了解」
 淡々と作業をする相原。
「此方、艦長。 ヤマトの乗員各員に伝える。 我が宇宙戦艦ヤマトは、10月9日0930に出撃する。 もう一度、繰り返す。 本艦は、10月9日0930に出撃する。 
各人其のつもりで準備に当たってくれ!! 其れから、幹部の者は直ぐに中央作戦室に集まってくれ!!」
 古代は、乗員全員に放送を流した。


 ヤマトは、出撃に向かって動き始めた。 数年の眠りから覚めるときが近づいてきた。
ヤマトの出撃日は、奇しくも大マゼラン星雲へ旅立った日と同じ10月9日。

 ヤマトの出撃まで後10日

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