第1章

「艦長!! 地球との定時交信の時間です」
 通信員が言った。
「よし。 繋いでくれ!!」
「了解。 通信回路を開きます」
 艦橋の大スクリーンにマゼラン運開拓本部長が現れた。

『石原くん、船団の運行は順調かね?』
「此方、マゼラン雲開拓船団護衛艦隊旗艦艦長石原!!」
『石原くん、必要な資源を何時送ってくれるのかね?』
「現在、最終採取中です。 積み込みが完了しだい地球へ帰還します」
『地球は、君たちの資源を待っている。 一刻も早く運んできてくれ!!』
「了解しました。 船団の許す最大船速で帰還します」
『期待しているぞ』
「定時交信を終わります」
 スクリーンからマゼラン雲開拓本部長の姿が消えた。

「船団各線に作業を急がせろ!!」
「了解。 各船に急がせます」
「地球では、我らの資源を待ちって居るものが大勢居るんだ!!」
 石原は、力説する。
「第五番船の作業が遅れ気味です」
「他の船から応援を出し急げ!!」
「はい」
 副長は、応援を出すよう各船に伝えた。

         ◇

「司令官!! マゼラン雲内に所属不明の艦隊を発見!! 如何なさいますか?」  
 レーダー兵は、報告した。
「我らが移民計画は何があっても成功させねばならない。我らの前に立ちはだかるものは全て敵と見な!!」
「はっ!! 全艦戦闘配備!! 目標、所属不明艦隊!!」
 副官は、司令の命令を矢継ぎ早に出す。
「司令、全艦攻撃準備完了しました」
「ようし、全艦攻撃開始!!」
 謎の艦隊から地球の船へ攻撃が加えられる。

         ◇

「艦長!! 所属不明の艦隊の攻撃で輸送船が次々沈んでいきます」
「何!! レーダー手は何をしていた」
「其れが本船団のレーダー圏外から攻撃でして……」
「言い訳は、いい。 全戦闘艦緊急発進!! 敵を殲滅する」
 護衛任務の戦艦が次々発信していく。

         ◇

「敵は、やっと気づいたようです」
「今頃、動き出しても無駄だ。 既に勝負が決しているのだからな……」
 司令は、言う。
「手加減は、無用だ!! 一気に片付けろ!!」
 司令は、残虐な命令を出す。
「敵の一欠けらも残すな!!」

         ◇

「二番艦、応答なし!!」
 譲許報告をする副官。
「艦首波動砲損傷!! 使用不能!!」
 被弾の衝撃に艦が揺れる。
「機関室付近に被弾!! エンジン出力低下!!」
「凄まじい攻撃だ!! 攻撃する前に全滅してしまう」
 敵の猛攻に驚く石原。
「艦長!! 撤退を……」
「無駄だ!! エンジンを遣られた我々に逃げ切れる余裕はない」
 ズズーン!!
「メインノズルに被弾!! 航行速度低下!!」
「ゆ、輸送船全滅!!」
 また、悲報が入った。
「ぜ、全滅だと!! 護衛戦艦は、何をしている!!」
「護衛戦艦も全滅です」
「防衛軍本部に非常事態信号送信しろ!!」
「了解!! 非常事態信号を送信します」
 非常事態信号を発した直後、旗艦は爆散した。

         ◇

「敵の殲滅完了しました」
「よし。 丁度、此の星には資源も豊富にあるようだ、此の星を銀河系攻略の前線基地とする」
「司令!! 銀河系侵攻艦隊司令のブリュンスタ大提督から通信です」
 兵士は、言った。
『アムールステル!!』
「ブリュンスタ大提督、所属不明の敵を発見撃滅いたしました」
『先ずは、大マゼラン星雲を手中に収めたようだな……』
「はい。 此れから当惑星に基地を建設、防衛線をしきます」
『其の星、資源は豊富なのか?』
「豊富です。 敵が採取していましたので間違いありません」
『よし。 直ちに軌道上に基地を設営しろ!! 私も艦隊を引き入って其方に赴く。座標を転送してくれ!!』
「はい。 ブリュンスタ大提督」
 アムールステルは、部下に座標の転送を命じた。
「たった今、本艦隊の停泊場所の座標を送りました」
『有無。 たった今、貴殿の艦隊から座標を受け取った。別命あるまでその場で待機、基地の設営に当たれ!!』
「了解、立派な基地でもってお迎えいたします」
『期待しておるぞ』
 そう言って通信は、切れた。

         ◇

「長官!! 大変です」
「如何かしたのかね!? 石原くん」
「長官、マゼラン雲開拓船団の護衛艦隊旗艦との定時交信の直後に非常事態を知らせる信号が発信されました」
「非常事態信号だと!!」
「非常事態信号を受け通信を試みましたが繋がりませんでした。マゼラン雲で何かあったと考えられます」
「大統領が言われていたのはこの事だったのか!?」
 長官は、不意に大統領の名を口にした。
「大統領の言われていたことが事実だとすると彼らには過酷な任務に就いてもらうことになる」
「長官!! まさか……」
 水谷が長官に聞いた。
 水谷は、彼の対戦で活躍し今では、艦を降り長官の片腕として働いている。
「水谷くん、真田くんにアクエリアス大氷球に行くように言ってくれ!!」
「了解。 真田科学局長官にアクエリアス大氷球に行くよう伝えます」


 地球に新たな危機が訪れようとしている。其の危機は、今までの比ではない。 

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