第13章

「総員に告ぐ!! 本艦は、極秘任務の為0830に発進する。 配置に就け!!」
 [春藍]の艦長は、命じた。
「総員配置につけ!!」
 艦内にアラームが鳴り響き乗員が慌しく行き来する。
艦長は、艦長席から命令を発する。
「波動エンジン始動!!」
 [春藍]の二基のエンジンがうねりを上げる。
「艦長発進します」
 操縦士が言う。
艦長は言わずに頷いた。
「戦闘指揮!! 波動砲は、0940に発射だ!!」
「はい」
 [春藍]で予定通りの行動の準備が粛々と進められる。
[春藍]は、改装中のドックから飛び立って軌道上へ上っていった。

         ◇

 アクエリアス大氷球では、ヤマトが出撃準備を完了していた。
「艦長!! 艦内各機構の異常ありません」
 技師長が報告した。
「操縦関係異常ありません」
 島が報告した。
「通信関係、異常ありません」
「各兵装、問題ありません」
「レーダー異常ありません」
 第一艦橋のクルーが次々に報告した。
古代は、艦長席で時計を見ながら待つ。
「艦長、地球防衛軍司令部から通信です」
 相原が言う。
「パネルに出してくれ!!」
「了解!! パネルに出します」
 メインパネルに長官の姿が浮かび上がった。
長官だけではなく、防衛軍首脳が全員いた。
『古代!! いよいよだな……』
「はいっ」
 古代は、敬礼をし長官は答礼をした。
『ところで古代、5分後に地球連邦大統領閣下から君たちに激励のお言葉がある』
 そう言って、通信は一旦切れた。
古代は、マイクを取り艦内に放送を流した。
「ヤマトの全乗組員に告ぐ!! 5分後に地球連邦大統領より激励のお言葉がある。 手の空いている者は静かに聴いてくれ!! 機関員は、作業を進めながら聞くように」
 そして、5分後映像が現れた。
『私は、地球連邦大統領イワン・フォン・シュピッツ・アインヘルンだ。 君たちを未知の宇宙へ送り出す張本人である』
 大統領は、話を続ける。
『既に敵が放ったハイペロン爆弾の事は知っていると思う。 ヤマトには、太陽系外で敵のハイペロン爆弾を撃破後、敵の母星に向かってもらう。 全ては、私が力不足によるためだ!! すまぬ。 だが君たちなら、此の困難な航海を無事成し遂げてくれると信じている。 君たちも出撃準備で忙しいだろう…… 之で、私からの話は終わりだ』
 大統領の姿が消えると古代は、命じた。
「之よりヤマトは出撃する総員配置に就け!!」
 艦内にアラームが鳴り響く。
「補助エンジン始動!!」
 徳川は、伝声管で機関室に指示を伝える。
ヤマトの補助エンジンが静かに動き出す。
「フライホイル接続!!」
 補助エンジンが生み出したエネルギーで左右の波動エンジンがうねりをあげ始める。
「スパーチャージャ始動!!」
 ヤマトの各所に命が篭る。
「波動エネルギー、六連波動エンジンに注入開始!!」
 ヤマトのエネルギーを更に巨大にする六連波動エンジンにエネルギーが送り込まれる。
「六連波動エンジン始動1分前!!」
「真田さん、アクエリアス大氷球爆破用意!!」
「爆破、カウントダウン始めます」
 真田は、爆破のタイミングを調整する。
「島!! 爆破と同時に発進だ!!」
「了解!! 電算室、太陽系内航行出力にセーブしてくれ」
 島は、出力を太陽系内航行出力にセーブするよう指示をだす。
電算室から了解との声が返ってきた。
「六連波動エンジン接続、始動!!」
 二基の六連波動エンジンが接続された。
「アクエリアス大氷球爆破!!」
「ヤマト発進!!」
 真田は爆破スイッチを押し、島は操縦桿をひいた。
アクエリアス大氷球に仕掛けられた爆薬がアクエリアス大氷球を砕いた。
 崩れ行くアクエリアス大氷球からヤマトが現れた。

         ◇

「艦長、ヤマトが出撃して行きました」
 [春藍]の副長が報告する。
「よし。 拡散波動砲発射用意!! 目標、アクエリアス大氷球」
「拡散波動砲への回路開きます」
 拡散波動砲へエネルギーを注入する機関長。
「拡散波動砲発射、10秒前!! 総員、対ショック対閃光防御」
 [春藍]の戦闘班長が言う。
カウントダウンを進める戦闘班長。
「拡散波動砲発射!!」
 トリガーをひく戦闘班長。
[春藍]から発射された拡散波動砲は、ヤマトのドックだったアクエリアス大氷球の残骸を飲み込み消滅させた。
「通信士!! ヤマトへ繋いでくれ!!」
「了解!! ヤマトへ繋ぎます」

         ◇

「艦長、[春藍]より通信です」
 相原が報告する。
「繋いでくれ!!」
「了解」
 相原は、そう言って通信を繋いだ。
『私は、[春藍]艦長。 ヤマトがドックとして使っていたアクエリアス大氷球の残骸は、機密消去のため当艦の拡散波動砲で消滅させました』
「私は、宇宙戦艦ヤマト艦長、古代進。 貴艦の行動に感謝する」
『本当は、ヤマトの出撃に同行したいのですが出来ません』
 事情を話す[春藍]艦長。
『ですが、ヤマトの太陽系内での演習の相手ぐらいはできます』
「防衛軍司令部の許可は、とられたのですか?」
『今から、とります』
 そう言って、[春藍]艦長は防衛軍司令部に連絡をする。
数分後、[春藍]艦長が話し始めた。
『防衛軍司令部の許可が取れました。 此れより3日間、ヤマトの演習の相手を務めます』
「お願いします。 演習内容を此れから送ります」
 古代は、相原に演習内容を[春藍]に送らせた。
ヤマトと春藍は、演習宙域へ向かった。

0 件のコメント: